信海(読み)しんかい

改訂新版 世界大百科事典 「信海」の意味・わかりやすい解説

信海 (しんかい)

13世紀後半に活躍した醍醐寺画僧生没年不詳。《毘沙門天像》《金剛童子像》《不動明王像》の白描図像が醍醐寺に伝存する。とくに1282年筆の《不動明王像》は伝統的形式にとらわれない図様で,また白描特有の鉄線でなく,濃淡,肥瘦のある墨線を用いて活写されており,ここに新たに渡来した中国の水墨画の影響をみることができる。信海は《尊卑分脈》には,似絵(にせえ)の名手藤原信実(のぶざね)の四男で,醍醐寺の僧となり,法印に叙せられた,とあり,その人と見られる。
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朝日日本歴史人物事典 「信海」の解説

信海

生年:生没年不詳
鎌倉後期に活躍した画僧。京都醍醐寺に伝わる3点の白描図像(画稿)にその名が残る。詳しい経歴は不明であるが,『尊卑分脈』に似絵の名手藤原信実の第4子として記された「醍醐法印信海」に当たるとみられる。「毘沙門天像」「金剛童子像」「不動明王像」(すべて醍醐寺蔵)はいずれも弘安年間(1278~88)に描かれており,活躍期の点でも信実の子とみて矛盾しない。3点は単なる模写ではない信海創案の図と思われ,墨の濃淡を使い分ける新しい描法も用いられている。なかでも「不動明王像」は,斬新な像容と闊達な描線で名高い。<参考文献>佐和隆研「信海とその図像」(『仏教芸術』12号)

(矢島新)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「信海」の解説

信海(2) しんかい

1821-1859 江戸時代後期の僧。
文政4年生まれ。法相(ほっそう)宗。京都清水寺で出家東大寺の竜肝に灌頂(かんじょう)をうけ,高野山の霊明にまなぶ。嘉永(かえい)7年(1854)兄月照の跡をつぎ清水寺成就院の住職となる。高野山で攘夷(じょうい)と王家安泰の修法祈祷をおこなう。幕府嫌疑をうけ,江戸の獄中で安政6年3月18日死去。39歳。大坂出身。俗姓玉井

信海(1) しんかい

?-? 鎌倉時代の画僧。
藤原信実(のぶざね)の4男という。弘安(こうあん)(1278-88)ごろ京都醍醐(だいご)寺に住した。法印。同寺に「毘沙門天像」「金剛童子像」「不動明王像」の白描図像をのこす。

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