日本大百科全書(ニッポニカ) 「個人情報ビジネス」の意味・わかりやすい解説
個人情報ビジネス
こじんじょうほうびじねす
特定の個人を識別できる情報や、個人の私生活が明らかになる記録などを、本人の了解を得ず、ひそかに売買すること。個人情報保護法が2005年(平成17)4月に施行され、一定数(政令により5000件)を超える個人情報を保有している個人情報取扱い事業者に対し、個人情報の取得、利用、管理に関する方法や義務が明確化された。長く社会問題となってきた「名簿業者」などによる情報の入手や売買には一定の歯止めがかけられたが、コンピュータやICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)の発達を背景に個人情報の取引自体は減少していない。
2012年に愛知県警が捜査していた個人情報取得事件では、さまざまな個人情報の調達を引き受ける「情報屋」の存在が浮かび上がった。この事件では、愛知県の情報屋は情報の入手にたけた全国各地の探偵業者を通じて依頼された個人情報を入手していた。探偵業者は運輸局職員や警察官、携帯電話販売店の従業員、貸金業者、司法書士などといった、情報閲覧の職権をもつ者に個人情報の種類に応じ入手を割り振っていた。このような個人情報の違法な入手を目的としたピラミッド型のネットワークが全国各地に存在していたことは社会に衝撃を与えた。
また、スマートフォンの利用が急激に増えた2010年以降、正規に入手したアプリや公衆無線LAN設備などを介した個人情報の漏洩(ろうえい)が頻発している。スマートフォン利用者の識別情報や位置情報、閲覧履歴などが無断で送信されたり、端末に登録した連絡先の情報を勝手に送信するなどの不正アプリの存在が明らかになり、パソコンにおけるケースと同様に深刻な情報漏洩事件の発生が懸念される。
インターネットやスマートフォンの普及により個人情報が漏れるという新たな問題を生み出しているが、アメリカやヨーロッパにおいても、ネット上での個人情報の定義と取扱いは、いまだ明確にされていない。
[編集部]