デジタル大辞泉 「個人情報保護法」の意味・読み・例文・類語
こじんじょうほうほご‐ほう〔コジンジヤウホウホゴハフ〕【個人情報保護法】
2 「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(行政機関個人情報保護法)の略称。
3 「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(独立行政法人個人情報保護法)の略称。
氏名や生年月日、住所など特定の個人を識別できる情報について、適正に取り扱うためのルールを定めた法律。2003年に成立した。企業による個人情報の取得や、第三者に提供する際の義務などを定めている。政府の個人情報保護委員会が所管する。改正による不正行為をした法人などへの罰金上限の引き上げは20年12月に施行された。
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2009年(平成21)の時点では、「個人情報保護法」とは、2003年5月に成立(2005年全面施行)した「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)の通称とするのが一般的であるが、個人情報の保護について定められた法律は、複数ある。
個人情報の保護に関する法制の整備としては、まず、1988年(昭和63)に国の行政機関のコンピュータに保存されている個人情報を保護し、情報化社会におけるプライバシーの保護を図る「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(昭和63年法律第95号)が制定された。この法律は、1990年(平成2)10月に全面施行されたが、個人情報ファイルの利用・提供の制限、自己情報の開示・訂正請求など、取り扱いに関する基本的な手続きや原則を定めている。この法律に基づく政令も整備され、国民が自分の情報の開示を請求できることとなり、開示された情報に誤りがあれば、その訂正を申し出ることができることとされた。
この「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」は、1980年(昭和55)の経済協力開発機構(OECD)理事会の勧告や1983年の「臨時行政調査会最終答申」、1986年の「行政機関等における個人情報の保護に関する研究会意見」の個人情報の保護対策の必要性の提言など、国際的な動向、国内的な意識の高まりを受けて制定されたものであった。しかし、情報収集についての制限については規定されておらず、マニュアル処理情報(電子計算機処理を通さない手作業による処理情報)は対象とされていなかった。また、民間保有情報については、こうした法制度がなく、関係省庁が作成するガイドラインや業界内部の自主規制にゆだねられていた。
民間保有情報についても、顧客データの流出、インターネット上にある個人情報の不正閲覧、会員名簿の売買など、個人情報に関する問題が多数生じており、行政機関以外が保有する個人情報の保護の必要性について議論が高まった。
[浅野善治]
こうした状況のなかで、1994年(平成6)8月に、内閣総理大臣を本部長とし、閣僚をメンバーとする高度情報通信社会推進本部が設置された。同推進本部は、1995年2月に「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を決定するとともに、1999年4月には、この基本方針に基づき「高度情報通信社会推進に向けた基本方針――アクションプラン」を策定した。このアクションプランでは、個人情報保護を電子商取引の本格的普及のための重要施策とし、高度情報通信社会推進本部の下に個人情報保護検討部会を設置することとした。個人情報保護検討部会は、1999年7月に設置され、同年12月には、個人情報保護システムの中核となる基本的な法制の確立に向けた具体的検討を進めることが決定された。
また、1999年には、住民基本台帳法の改正が審議された。住民基本台帳ネットワーク構築をめぐって個人情報保護が確実に図られるかが大きな問題とされ、住民基本台帳法改正法の附則に「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」との規定が設けられた。
これらの背景を受けて、2000年1月に、高度情報通信社会推進本部の下に個人情報保護法制化専門委員会が開催され、同年12月に「個人情報保護基本法制に関する大綱」を取りまとめた。内閣は、2001年3月に、この大綱の内容を踏まえた「個人情報の保護に関する法律案」を国会に提出した。また、行政機関が保有する個人情報に関しても、基本法制として見直しが行われ、2002年3月に「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」および「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案」として提出された。しかし、その内容がメディア規制につながるとして、日本新聞協会などの関係団体から強い反対意見が出され、幾度かの継続審議とされた後、2002年12月に廃案となった。
[浅野善治]
その後、2002年時に廃案となった法律案の内容に、これまで出された意見を考慮して修正を加え、再提出され、2003年3月に「個人情報の保護に関する法律案」(平成15年法律第57号)が成立、同2003年5月に「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第58号)および「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第59号)が成立している。
これらの法律の制定により、個人情報保護の基本法制の整備が行われたが、地方公共団体の保有する個人情報については、各自治体が個人情報保護に関する条例を制定して保護を行うこととされている。地方公共団体の個人情報保護法制については、2006年4月の時点で、すべての都道府県、市町村において個人情報保護に関する条例が制定されている。
「個人情報の保護に関する法律」の内容は、個人情報保護に関する基本理念を定めるとともに、国および地方公共団体の責務、基本方針の策定、国および地方公共団体の施策等が定められているほか、個人情報取扱業者の義務として、利用目的の特定、利用目的による制限、適正な取得、取得時の利用目的の通知、内容の正確性の確保、従業者・委託先の監督等の安全管理等が定められている。また、利用目的や開示に必要な手続き等の公表、本人からの求めによる開示、訂正、利用停止等に関する事項や苦情の処理などのほか、主務大臣の関与についても定められ、民間団体による保護の推進についての規定も設けられている。
制定時の議論を反映して、報道、著述、学術研究、宗教活動、政治活動の用に供する目的で個人情報を取り扱う報道機関、著述を業として行う者、学術研究機関等、宗教団体、政治団体については、個人情報保護取扱業者が負う義務についての適用が除外され、安全管理、苦情処理等のために必要な措置を自ら講じ、その内容を公表することとされている。
[浅野善治]
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