充塡塔(読み)じゅうてんとう(その他表記)packed column

改訂新版 世界大百科事典 「充塡塔」の意味・わかりやすい解説

充塡塔 (じゅうてんとう)
packed column

気-液両相間の接触面積を大きくし,各相の流れを乱して両相間の物質移動速度を大きくするために,内部に各種の充てん物を詰めた塔。化学工場から出る廃ガスの中の有毒性の成分(たとえば塩素酸化窒素)を水などに吸収させて処理するために19世紀の初めころから用いられた。初めは円筒形の空塔の中にセッコウコークスのかすなどを詰め,上方から水を,下方から廃ガスを送り込んで吸収を行わせていたが,現在では各種の充てん物が使用されている。充てん物の材質としては,耐食性を考えた陶磁器類や高分子物質なども使われているが,強度の面から金属が最も多く使われている。有名なものは図に示すラシヒリングRaschig ring,ベルルサドルBerl saddle,ポールリングPall ringなどの不規則充てん物であるが,最近では金網などで作った規則充てん物も使われている。

 充てん塔の内部では,液は充てん物の表面に沿って流下し,ガスは充てん物間の隙間を上昇して気-液接触が行われる。したがって棚段塔に比べてガスの圧力損失が少ないことが大きな特徴であり,吸収だけでなく真空蒸留にも充てん塔がよく用いられている。また実験室的には蒸留抽出にも最も多く用いられている。下方からのガスや蒸気の量が増加すると,しだいに圧力損失は増大し,ついには液が流下しないようになる。このような状態をフラッディングfloodingまたは溢汪(いつおう)という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「充塡塔」の意味・わかりやすい解説

充填塔
じゅうてんとう
packed tower

気体液体、液体‐気体の間で物質移動、熱移動を行わせる装置で、空塔内に種々の充填物packingを詰めた塔である。充填物としては古くは岩石片、コークスが用いられたが、磁製、金属製、プラスチック製のラシヒリング、ベルルサドル、ポールリングなど種々の形状、大きさのものが市販されている。充填方式としては、径の小さい充填物では不規則充填、径の大きいものでは規則充填が行われている。

[早川豊彦]

充填塔の構造と機能

液が充填物表面上を薄い液膜状に流下し、その間隙(かんげき)を連続相として流れる気体(または他の液体)と接触させ、気‐液間(または液‐液間)の接触面積を大きくし、かつ圧力損失を小さくし、同時に気・液各相の流れに乱れを与えて、物質移動、熱移動の速度を大きくする。通常は、液を塔頂の液分布器から充填物の層上に均一に供給するが、塔内を流下する間に塔壁側に偏流するので、塔中央に液再分布器を設け、層内を均一に流れるようにする。一方、気体は塔底から供給して、充填物とその表面を流下する液膜の空隙を上昇させ気・液を向流に接触させる方式が用いられるが、気・液を同時に塔頂から供給して並流に接触させる方式もある。充填塔による気・液の接触は連続的に行われるため、気・液の濃度(または温度)が連続的に変化する。このような接触を一般に微分接触方式といい、段塔による階段接触と対比される。

 充填塔は気‐液間の接触によるガス吸収、蒸留、調湿のほかに、液‐液間の接触による抽出にも用いられる。固体の触媒や吸着剤を詰めた塔も充填塔であるが、これは充填層または固定層とよぶことが多い。

[早川豊彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「充塡塔」の意味・わかりやすい解説

充填塔
じゅうてんとう
packed tower

気体と液体,液体と液体など異相間の物質移動や熱移動を能率よく行うため,内部に充填物を詰めた塔。異相間の接触面積を大きくし,各相の流れに十分の乱れを与えて,吸収,蒸留,吸着,抽出などの物質移動を効果的に行わせる装置である。普通,塔頂から充填物に沿って流下する液と,塔底から充填物の間隙を上昇する気体を向流接触させるが,並流させることもある。充填物は製造が簡単で安価,ガス流に対する抵抗が小さい,表面積が大きく,液で濡れやすい,重量が軽く,機械的強度が十分にあり,耐熱性,耐食性にすぐれているものが種々考案されている。充填物には,古くはコークスや破砕岩石などを使ったが,20世紀初め,ラッシヒリング,レッシングリング,ベルサドルなどの人工充填物が出現した。また蒸留用に金属製のマクマホン充填物などもできている。その他,スパイラルリング,ポールリング,インターロックスなどがある。

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化学辞典 第2版 「充塡塔」の解説

充填塔
ジュウテントウ
packed column

気-液相,液-液相などの異相間の物質移動を効率よく行わせるために,なかに充填物を詰めた塔をいう.工業的には,ガス吸収にもっとも広く用いられているが,蒸留にも,溶剤抽出にも用いられる.また,気体の増湿,減湿,水の冷却など,きわめて用途が広く,構造が簡単で製作が容易な利点がある.異相間の接触面積を増加させ,またガスの圧力損失を小さくするような充填物が考案されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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