先天性肝線維症

内科学 第10版の解説

先天性肝線維症(特発性門脈圧亢進症)

定義・概念
 肝臓の門脈域の線椎化と小葉間胆管の増生・拡張を特徴とするまれな先天性遺伝性肝疾患であり,おもに小児期,青年期にみられる疾患である.Caroli病などとともにfibropolycystic liver diseaseに分類されており,肝・腎の囊胞性病変を高率に合併する.
原因
 胎生期の胆管系の形成異常を基盤に発生すると考えられている.常染色体劣性遺伝を示すが,散発的に発生する例もある.
疫学
 わが国ではまれである.しばしば20歳以下の若年期に発症する.一方,最近では30歳をこえてから健診などで偶然に発見される潜在型が増加しつつある.
病理
 門脈域は線維性に拡大し,門脈域間に幅の広い線維性架橋を形成する例もある.門脈域の胆管には特徴があり,相互に吻合するような胆管が多数みられ,門脈枝は狭小化している(図9-15-2).ただし,肝硬変にみられる再生結節や線維性隔壁は認めない.通常炎症細胞浸潤はみない.
病態生理
 食道・胃静脈瘤の原因となる門脈圧の亢進の機序は肝内門脈枝の狭小化や線維による圧迫のためと考えられている.また,多発性腎囊胞(多くは常染色体劣性,ときに常染色体優性)を合併し,種々の程度の腎障害を示すことがある.常染色体優性多発性腎囊胞合併例の大部分は肝囊胞を伴う.
臨床症状
 貧血や静脈瘤出血による吐・下血で発症することが多いが,無症状の症例もある.通常,肝脾腫を認める.黄疸,腹水,肝性脳症などの肝不全症状はみられない.
検査成績
1)血液検査:
末梢血では種々の程度の汎血球減少がみられる.アルカリホスファターゼの上昇をみることがあるが,ほかの一般肝機能検査は通常正常である.
2)画像検査:
腹部超音波検査,造影CT検査に特徴はないが,肝・腎の多発性囊胞を認めることがある.内視鏡検査にてしばしば食道・胃静脈瘤を認める.
診断
 若年者の食道静脈瘤の破裂をみた場合,あるいは門脈圧亢進症状を有するにもかかわらず,一般肝機能検査がほぼ正常で,肝炎ウイルス感染がなく,アルコールの過飲者でもない場合には,本症を疑う.特徴的な肝生検所見により確定診断が下される.
鑑別診断
 肝硬変や特発性門脈圧亢進症との鑑別が重要であり,しばしば誤診される.肝硬変は線維性隔壁を有する再生結節を形成する.特発性門脈圧亢進症には,本症にみられる特徴的な肝内胆管の変化はない.
合併症
 先天性肝内胆管拡張症(Caroli病),総胆管囊腫などの胆管系異常,多発性肝囊胞,腎囊胞性疾患を高率に合併する.
経過・予後
 食道・胃静脈瘤出血に対して適切な処置が講じられれば,肝機能は保たれており,予後は良好である.
治療
 門脈圧亢進症に対する治療と合併する胆管炎,腎障害に対する治療を行う.食道・胃静脈瘤の出血に対しては内視鏡的治療(硬化療法,結紮療法)や経頸静脈性肝内門脈大循環短絡術(transjugular intrahepatic portosystemic shunt:TIPS)などの門脈・下大静脈シャント術の適応となる.まれに腎移植や肝移植を要する場合もある.[鹿毛政義]
■文献
日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会編:門脈圧亢進消取り扱い規約,Ⅵ 病理,p61,金原出版,東京,2004.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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