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先天性股関節脱臼 せんてんせいこかんせつだっきゅうcongenital dislocation of the hip; CDH

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

先天性股関節脱臼
せんてんせいこかんせつだっきゅう
congenital dislocation of the hip; CDH

大腿骨骨頭が寛骨臼より脱臼しているものをいい,整形外科を受診する先天性疾患の第1位を占める。女児に好発する。おむつを取替えるときに股の開きが悪く,痛がって泣くことで発見されることが多い。下肢の短縮が起り,歩きはじめる時期が遅れやすい。生後1年以内に発見された場合は,関節を動かしながら修復していくリーメンビーゲル法によって,ほとんど治癒する。

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デジタル大辞泉の解説

せんてんせい‐こかんせつだっきゅう〔‐コクワンセツダツキウ〕【先天性股関節脱臼】

生まれつき股関節脱臼を起こしている状態。女児に多い。

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百科事典マイペディアの解説

先天性股関節脱臼【せんてんせいこかんせつだっきゅう】

生まれつき骨盤の受け皿が浅く,関節包もゆるんでいるために起こる股関節脱臼股関節の構造に先天的な欠陥があるため起こるものと,胎内もしくは生下時,あるいは出生直後に骨頭が転位して脱臼するものがある。
→関連項目奇形股関節変形性関節症

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家庭医学館の解説

せんてんせいこかんせつだっきゅう【先天性股関節脱臼 Congenital Dislocation of the Hip】

[どんな病気か]
 赤ちゃんの股関節(股(また)の関節)が、外傷もないのに、はずれている(脱臼している)病気です。
 日本では、25年前までは、赤ちゃんの1%にみられる、かなり頻度の高い病気でした。しかし現在は、育児法の改善(予防運動)にともなって、0.3%にまで減ってきています。
 男の子1に対して女の子6の割合で女の子に圧倒的に多いのが特徴となっています。
 この病気は、妊娠中に子宮の中で膝(ひざ)を伸ばした姿勢でいた、いわゆる逆子(さかご)(骨盤位分娩(こつばんいぶんべん))の赤ちゃんに多くみられます。
 生まれつき(先天的に)関節がゆるくて(関節弛緩(かんせつしかん))、不安定な股関節をもっている赤ちゃんで、出産直後からの不適当な育児環境が加わることによって、脱臼がおこることが証明されています。
[症状]
 生まれて1週間以内の赤ちゃん(新生児)に股関節脱臼があると、股を大きく外に開いたときに、コクッという音がします(クリックサイン)。
 また、生後1か月以後の赤ちゃんでは、股関節の開き方が悪い(開排制限(かいはいせいげん))、脚(あし)の長さがちがう、太ももの内側のしわが左右対称でない、脚の動きがふつうとちがうなどの症状がある場合、股関節脱臼を疑います。
 赤ちゃんが歩き始めると、脚を引きずって歩いたり(跛行(はこう))、お尻を突き出して歩いたりします。
 X線写真では、股関節の状態によって、①完全脱臼、②亜脱臼(あだっきゅう)(はずれかかった状態)、③臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)(脱臼ではないが、関節の発育が悪いもの)に分けることができます。
 最近は、超音波検査(エコー)も行なわれています。
[治療]
 臼蓋形成不全の場合には、股関節をなるべく開いておくだけで、ほとんどが自然に治ってしまいます。
 亜脱臼や完全脱臼の場合は、リーメンビューゲルという、肩から脚をつるバンドを装着します。
 生後3~6か月の間に、リーメンビューゲルを正しく使用すれば、亜脱臼は、ほとんどが治ります。また、完全脱臼でも、その85%が、装着後1週間以内に整復されます。
 脱臼が整復されれば、股関節の開きがよくなります。
 リーメンビューゲルの着用期間は、ほぼ4か月です。
 リーメンビューゲルで整復されない脱臼の場合には、入院して、脚を4週間牽引(けんいん)した後に、全身麻酔をかけて整復し、ギプスや装具などを用いて治療します。
 こうした治療で、どうしても整復できないときは、手術を行なうことになります。
 整復された股関節は、それ以後10歳ぐらいまでに、しだいに発育して、正常に近くなっていきますが、その間は、経過を注意深く観察する必要があります。
 定期検診を行なって、どうしても股関節の発育が不良で、成人した後に股関節の痛み(「変形性股関節症」)がおこる危険性があるときには、手術によって股関節を正常に近い形につくりかえることもあります。
[予防]
 先天性股関節脱臼は、先天性といっても、日ごろのお母さんの注意があれば、かなり予防することができます。
 赤ちゃんの股関節と膝を伸ばしてしまうような服やおむつのつけ方は避けることがたいせつです。
 生まれたばかりの赤ちゃんは、カエルの脚のように股(また)を広げて、脚を曲げていますが、その格好をじゃましないようにし、また、自由に脚を動かせるようにしてあげてください。
 赤ちゃんの横抱きはやめて、コアラのように、お母さんのおなかの前にだっこすることも、股関節脱臼を予防するためによいことです。
 おんぶするときも、股が広がるような状態でしてあげます。

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世界大百科事典 第2版の解説

せんてんせいこかんせつだっきゅう【先天性股関節脱臼 congenital dislocation of the hip joint】

出生時または生後まもなく大腿骨頭が関節包に包まれたまま寛骨臼外に脱出(関節包内脱臼)する疾患で,外傷による脱臼によって関節包が破れて脱臼するものとは病態が異なる。CDHと略記し,先股脱と略称する。治療しないでいると跛行,歩行障害を生ずる。以前は日本には非常に多く,肢体不自由の大きな原因となり,その対策が社会的に大きな問題とされたが,早期発見,早期治療に対する保健関係者と整形外科医の努力と,早期治療に適した治療法の開発により,障害を残す患者はたいへん少なくなってきた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

先天性股関節脱臼
せんてんせいこかんせつだっきゅう
congenital dislocation of the hip joint

生まれつき股関節が脱臼(きゅう)しているものをいい、先天股脱と略称され、CDHと略記される。本来は股関節を構成する骨の発育欠陥、つまり先天性の形態異常としてみられる脱臼であり、おもに胚(はい)形質欠損によって子宮内で発生する脱臼をさすが、頻度は少ない。これに対して通常みられる定型的先天股脱は、関節包や靭帯(じんたい)の弛緩(しかん)、子宮内の胎位異常による機械的因子や出生後の育児環境因子など後天的要因によるものと考えられ、出生後に骨頭が寛骨臼から脱臼する。放置すれば跛行(はこう)、歩行障害を生ずる。女子に多く、男子の5、6倍発生する。
 文献的には古代ギリシア時代から知られている疾患であり、かつては日本でも非常に多く、ローレンツ肢位とよばれる整復法とギプス固定、およびマッサージなどの後療法が行われていた。しかし、新生児および乳児検診によって早期に発見されるようになり、早期治療が普及して、1960年(昭和35)ころからは、リーメンビューゲル法とよばれる機能的療法が行われるようになり、また育児上の先天性股関節脱臼の予防法などの注意の喚起によって歩行障害を残すような患者は非常に少なくなった。[永井 隆]

リーメンビューゲル法

1957年にチェコスロバキアのパブリックA. Pavlikがドイツ語で発表した先天股脱の機能的療法で、整形外科医の鈴木良平(1922― )により日本へ紹介された。リーメンビューゲルRiemenbgelは「あぶみバンド」とも訳され、肩からつるバンドと鐙(あぶみ)状に足をつるバンドからなる治療装具で、患児の両股関節を90度前後に屈曲した肢位に装着する。患児が下肢を伸展しようとすると、足が体の側面からつられているので、乗馬の際に鐙に足をふんばると股関節が外転するのと同じように、大腿(だいたい)を外転させる力が加わり、これが股関節の整復に役だつことになる。装着後1、2週以内にその多くが整復され、その後徐々にバンドを緩めて3~6か月で除去する。
 なお、この装具によっても自然整復されない場合は、徒手整復や観血的整復が行われる。[永井 隆]

育児上の注意

先天股脱の予防法として重視されているもので、新生児に対し、子宮内にいたときの屈曲した肢位を他動的に急激に伸展させないよう心がけ、時間をかけて自然に脚を伸ばすことができるように注意するだけで脱臼の発生頻度が大幅に減少するといわれている。すなわち、おむつは股間だけに当て、脚を伸ばして包むようなことはしない。おむつカバーは下腹部を幅2センチメートルほどのベルトで留め、これに股間部の布を留めるようにする。肌着の下肢のところを締めるような紐(ひも)などは除去する。ズボンや服は股間部を十分に広くする。抱く場合は、下腹部や腰に向かい合わせに子供を抱き、股関節を90度以上屈曲して、頭部を自分の上腕部にもたせかけるようにする。授乳をする場合もこの抱き方で行う。要するに、股関節を屈曲外転位(股(また)を大きく開いた開排位)にするよう心がけるわけで、生まれてすぐから全児に対して実施することが望まれる。[永井 隆]

新生児および乳児検診

次に重要なことは、生後1週間以内に行われる新生児検診と乳児検診である。この検診では、肢位、開排制限、脚長差、クリックサインなどがチェックされる。クリックclickとは、開排角の増減に応じて骨頭が寛骨臼内に整復されたり脱臼したりするときにおこる擬音語で、この開排位での雑音触知をクリックサインという。これを誘発するつもりで多少力を加えて行うことにより、関節弛緩性の新生児脱臼の診断に役だつが、強くやりすぎると股関節に緩みを新たにつくる危険がある。X線検査は、新生児には普通行われない。
 この検診で先天股脱が発見されると、まずリーメンビューゲル法が行われる。これにより治りやすい条件を与えるわけで、事実、大部分が整復されて自然治癒する。それでも10~15%くらいは整復されないことがあり、前述のように徒手整復や、場合によっては手術による整復が行われるが、リーメンビューゲル法を実施した患児の予後は比較的よい。[永井 隆]

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世界大百科事典内の先天性股関節脱臼の言及

【おむつ】より

…昭和中期,第2次大戦後に普及したパンツ形のあて方が多い。しかし股間にだけ布をあて,腰まわりをくるまない方法(股おむつ)が,先天性股関節脱臼の生後成立を予防するためにすすめられ普及しつつある。乳児の体をおおう部分が少なく,下肢の運動を制限しないのでよい方法である。…

※「先天性股関節脱臼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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