光分散(読み)ひかりぶんさん

改訂新版 世界大百科事典 「光分散」の意味・わかりやすい解説

光分散 (ひかりぶんさん)

プリズムに細い平行な白色光を入射させると,プリズムから出る光はいろいろな色に分かれる。これは光の屈折率波長によって異なるために起こるもので,このように光の屈折率(いいかえれば媒質中の光の速度)が波長(振動数)によって異なる現象を光分散という。分散現象は光による媒質の分極により生ずるもので,現象論的には次のように説明される。すなわち,光が一様に媒質中を進むとき,光は電磁波であるため,その電場成分によって媒質中の電子がゆり動かされ,光が散乱される。この散乱光が干渉し合って,その結果として一様に媒質中を光は直進するが,散乱によって位相がずれ,それが波長によって違うために進む速さは波長によって異なることになる。

 光の振動数の増加,したがって波長の減少とともに屈折率が増加するような分散を正常分散という。このような分散は,媒質の吸収帯から離れた領域で起こる。一方,媒質の吸収帯付近の波長で生ずる分散はこれとは異なった形となり,異常分散と呼ばれる。ガラスや水晶などの可視光に対する屈折率は,波長が短くなるにつれて増加するので,正常分散が生じていることになる。しかし,これらの物質は紫外域や赤外域に吸収帯があり,その近傍では波長の長い光のほうが短い光よりも屈折率が大きくなる。したがって,この部分では異常分散が生じていることになる。異常分散の現象は,プリズムを作って光を分散させる実験で,吸収帯の波長付近でのスペクトルに,配列順序の異常が現れることからわかる。
屈折
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