化学辞典 第2版 「光合成サイクル」の解説
光合成サイクル
コウゴウセイサイクル
photosynthetic cycle
光合成における炭酸還元の代謝回路には,通常の高等植物や藻類で行われているカルビンサイクルや,維管束鞘(しょう)に葉緑体を有するサトウキビ,トウモロコシなどの高等植物で行われている C4-ジカルボン酸サイクルがある.【Ⅰ】カルビンサイクル:M. Calvin(カルビン),A.A. Bensonらによって明らかにされた炭酸固定サイクルで,ベンソン-カルビンサイクルともいう.RuDP(リブロース二リン酸,図中の(11))を受容体として,光のエネルギーによって生成したNADPHの還元力と,アデノシン5′-三リン酸(ATP)のエネルギーによる二酸化炭素から糖を合成する過程.生成したフルクトース(図中の(5))の一部は糖またはデンプンへ,残りはRuDPの再生に使われる.
【Ⅱ】 C4-ジカルボン酸サイクル:M.D. Hatch,C.R. Slackらによって解明された炭酸固定サイクル.維管束鞘葉緑体を有する高等植物は,まず共存する葉肉細胞葉緑体中において,ホスホエノールピルビン酸を受容体としてCO2をオキサロ酢酸(OAA)として固定し,ついでOAAはそのまま,あるいはリンゴ酸またはアスパラギン酸に変化した状態で維管束鞘葉緑体に移行して,脱炭酸を受けて生成したCO2は,カルビンサイクルに類似した反応により,RuDPを受容体として糖へと還元される.
【Ⅲ】カルボン酸還元サイクル:D.I. Arnonらによって発見されたサイクル.光合成細菌では,光によって生成したフェレドキシンの還元力が,図のようにトリカルボン酸(TCA)サイクルを逆行させて,炭酸を固定する.1回転(外側の反応)当たり4分子のCO2が取り込まれる.短いサイクル(内側の反応)で取り込まれるCO2は2分子.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報