合有,総有と並ぶ共同所有の一形態。数人が同一物の所有権を数量的に分有すること。目的物が共通であることによる共同関係以外には団体的拘束がなく,きわめて個人主義的な共同所有である。ローマ法に由来するものとされる。ローマ法では,共有は紛争のもとという言葉があることからもわかるように,共有を好ましくないものとみて,できるだけ,その成立を限定し,成立した場合でも,なるべく,共有者間の拘束を弱め,共有の継続を阻止する態度がとられた。これは,その後,フランス民法,ドイツ民法などに継受されて,日本民法に及んでいる。したがって,日本民法でも,共有は暫定的・経過的なものとされ,各人は,目的物のうえに有する所有権の数量的一部としての持分権(単に持分ともいう)を自由に処分でき,また,いつでも共有を解消できるとされる。
共有については民法249条以下に種々の規定が置かれている。共有には,当事者の約束に基づいて成立する場合と法律の規定に基づいて成立する場合がある。たとえば,A,B2人が1台の自動車を共同で買って所有する場合が前者であり,Cの所有地からDが掘り出した1個の壺が所有者不明のため土地所有者Cと発見者Dの共有とされる場合(241条)は後者である。各共有者は,対外的に単独で持分権を主張でき,また,持分の割合に応じて目的物を使用,収益できる。持分の割合が明らかでない場合は均等と推定される。共有物の変更(山林を宅地にするなど)は,共有者全員の同意が必要であるが,共有物の保存行為(破損個所の修繕,未登記不動産の登記など)は,各人が単独でできる。変更・保存以外の管理(共有物の賃貸借の解除など)は,共有者数でなく,持分の価格により,その過半数で決める。共有物の管理費用・公租公課などは,各人が持分に応じて分担する。この分担金を1年内に支払わない共有者がいる場合,他の共有者は,相当の償金を払って,その不払共有者の持分を取得できる。また,共有者の1人が,他の共有者の分担金を立替払いした場合,この立替金の請求は,その債務者である共有者の持分の特定承継人(譲受人など)に対してもできる。共有者は,5年以内の期間であれば,共有物を分割しないという契約ができ,また更新もできるが,その期間は,更新のときから5年以内にかぎられる。不分割契約がなければ,各共有者は,いつでも共有物の分割を請求できる。ただし,相隣者間の共有に属する境界線上の塀などのように,法律上,分割が禁止されてる共有物は分割できない(257条)。分割の方法は,共有者全員の協議がととのうかぎり,とくに制限はなく,現物を分割しても,第三者に売却して代金を分けても,また,共有者の1人が現物を取得して他の者に価格の一部を与えてもよい。協議がととのわない場合には,裁判所に分割を請求できる。裁判所では,現物を分割するのが原則であるが,それが不可能または困難な場合には,共有物を競売してその代金を分割する。
執筆者:玉田 弘毅
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一般に数人の者が一つの物を共同に所有する状態、いわゆる共同所有をさすが、厳密には、そのような共同所有のうち、団体的拘束の強い「総有」や「合有」といわれる型のものを除いた、比較的個人的色彩の強い型のものをいう。民法ではこれを普通の型としている(249条~264条)。共有関係は、複数の者が1軒の家を買った場合など、お互いの意思表示で発生する場合と、法律の規定に基づいて発生する場合(たとえば、他人の土地から、壺(つぼ)を掘り出したとき、その所有者が不明である場合には、その壺は土地所有者と発見者の共有になる)とがある。
共有とは、一つの物全体のうえに数人の者が等しく所有権をもっていて、どこまでがだれの部分と決められない状態である。そして、共有者が共有物のうえにもつ権利は持分(もちぶん)あるいは持分権とよばれ、共有者間ではその持分の割合が決められる。その割合は、共有者の意思表示によって、あるいは法律の規定によって定まる。民法はその割合を等しいものと推定する(たとえば、3人が同額を出し合って1軒の家を買った場合には、おのおの3分の1ずつとなる。民法250条)。
共有者は、その持分の割合に応じて共有物全部を使用することができるが(同法249条)、そのかわり、共有物の管理費や税金などもその割合で負担する(同法253条)。共有物の管理は、原則として各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決める(共有物の利用方法、改良行為など)。しかし、共有物の現状を維持しようとする保存行為(たとえば、共有物をかってに使っている他人に対して所有権に基づき妨害の排除を請求するなど)は、各共有者が単独でもできるし(同法252条)、共有物自体を処分したり変更したりする場合には全員の合意を必要とする(同法251条)。
共有者はいつでも共有物の分割を請求することができる。分割しないという契約をすることもできるが、その契約も5年を超えることはできない(同法256条)。分割は共有者全員で相談のうえで決めれば、どのように分けてもよい。現物で分割しても、売却して代金を分けても、また、1人が現物をもらい、ほかの者に価格の一部を与えることもできる。分割の請求に、ほかの共有者たちが応じなかったり、分割の方法について意見が一致しなかったりした場合には、裁判所に訴えて分割してもらうことができる(同法258条)。
分割が終われば、そのときから、各共有者は自分に割り当てられた部分の単独の所有者となる。
[高橋康之・野澤正充]
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字通「共」の項目を見る。
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出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本」パソコンで困ったときに開く本について 情報
…数人または多数人が共同で同一物を所有することで,共有,合有,総有の三つがある。共有は,一般に,偶発的・暫定的な共同所有であることから,団体的制約が最も少なく,各人は所有権を数量的に分有し,自由にその持分権の処分ができ,原則としていつでも目的物の分割請求ができる。…
…共同所有には3種の形態がある。第1は共有である。共有の特色は各人は持分を有し,分割請求権を有する点にある。…
※「共有」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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