全谷里遺跡 (ぜんこくりいせき)
Chǒnkongni-yujǒk
韓国,京畿道漣川郡全谷面全谷里にある旧石器時代の代表的遺跡の一つ。朝鮮半島のほぼ中央,北緯38度線を北に越えたすぐの地点に位置する。1978年に発見され,その翌年から10年計画で発掘調査が実施されている。遺跡は漢灘江右岸の台地上に立地し,片麻岩盤上に,砂礫層と溶岩(玄武岩)層が十数mの厚さで堆積するが,石器は約27万年前とされる溶岩層の上にある,厚さ5mほどの粘土層から検出される。この粘土層は火山灰層ではなく,長期にわたる自然堆積とされる。地表面採集および堆積層出土の石器には,ケイ岩製のハンド・アックス,両面石器,クリーバー,多角面円球,チョッパー,チョッピング・トゥール,スクレーパー,石槌などがある。それらの形態学的ならびに統計学的分析によると,ヨーロッパの前期旧石器時代のアシュール文化に酷似し,東アジアでは最初で,確実な両面加工のハンド・アックス伝統の旧石器文化といわれている。
執筆者:西谷 正
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全谷里遺跡【ぜんこくりいせき】
韓国京幾道の旧石器時代遺跡。1979年ユーラシア西部の前期旧石器のハンド・アックスに類似した石器が出土し,当初原人の朝鮮半島への到来を示す証拠として注目された。しかし遺跡の年代については30万年から40万年前とする説と旧人段階の4万年から5万年前とする説がある。
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全谷里遺跡
ぜんこくりいせき
Jon'gok-ri
韓国京畿道漣川郡全谷里にある旧石器時代の遺跡。 1978年,アメリカ軍人によって発見された。 79年から 80年までの調査によると,石器は漢灘江両岸の標高 60mぐらいの丘陵上から,5地区に分れて発見される。石器を包含する地層は褐色粘土層,赤褐色粘土層,黄褐色粘土層の3層に分れる。発見された石器には各種の両面石核石器,クリーバー,チョッパー,チョッピング・トゥール,多角面円球などがあり,ほとんど石英と石英岩でつくられている。東アジアにおける西ユーラシア風の石器の出土として注目されている。
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世界大百科事典(旧版)内の全谷里遺跡の言及
【旧石器時代】より
… シベリアでは,アムール川中流域にあるフィリモシュキおよびクマラ遺跡,さらにオビ川上流にあるウラリンカ遺跡などから,チョッパー,チョッピングトゥールを含む前期旧石器が発掘されている。また韓国では1978年に発見された京畿道川郡の全谷里遺跡で,東アジアでは初めてのアシュール系ハンド・アックス文化が確認された。どういうルートを通ってハンド・アックス文化が朝鮮半島の中央部に達したのかは,今のところ未解決の問題である。…
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