日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥール」の意味・わかりやすい解説
トゥール(フランス中西部、アンドル・エ・ロアール県)
とぅーる
Tours
フランス中西部、アンドル・エ・ロアール県の県都でトゥレーヌ地方の中心都市。人口13万2820(1999)、13万6252(2015センサス)。パリの南西225キロメートルに位置し、ロアール川に臨む。鉄道、道路(高速道路を含む)など交通の要衝であり、ロアール川の城巡りの拠点となる観光都市でもある。農産物、ワインの集散地。パリとの交通が至便のためパリ地方からの工業分散の影響を受け、機械、電気、化学、出版などの近代工業が盛んであるほか、衣服、家具などの伝統工業もある。
[高橋伸夫]
歴史
古代ローマ人の征服を受けたのち、5世紀に入ると司教区として名声を博すようになり、マルタン・ド・トゥール(トゥールのマルティヌス)やグレゴアール・ド・トゥール(トゥールのグレゴリウスGregorius、540?―595)の司教の名がよく知られている。732年カール・マルテルがイスラム教徒の侵攻を撃退した戦闘「トゥール・ポアチエの戦い」の戦場としても歴史にその名を刻している。ナントの王令の撤回後、この町の経済は衰退に向かった。フランス革命時代は王党派バンデー人に抗する共和派の拠点となった。この町は1920年12月フランス社会党の第三インターナショナルへの加盟を決定した会議が開かれた所としても知られる。
[志垣嘉夫]
トゥール(フランス東部、ムルト・エ・モーゼル県)
とぅーる
Toul
フランス東部、ムルト・エ・モーゼル県の副県都。ナンシーの西23キロメートルにあり、モーゼル川とマルヌ・ライン運河に沿う。旧名トルムTullum。人口1万6945(1999)。1944年以後修復された華麗なゴシック様式の正面をもつサンテティエンヌ寺院(12~15世紀)や、サン・ガングルト教会がある。タイヤ、機械、家具、既製服などが生産される。4世紀以来、司教座の所在地。中世には独立した司教都市となり、13世紀に自治権を獲得。1648年にフランスに併合された。プロイセン・フランス戦争でドイツ軍に占拠されたが、第一次世界大戦初期の攻撃は免れた。技師ボーバンの築いた城壁がある。第二次世界大戦中の1940年、1944年に戦禍を受けた。同大戦中、米軍の本部があった。
[大嶽幸彦]