翻訳|Tours
フランス中部,アンドル・エ・ロアール県の県都。人口13万2637(1999)。周辺地区を併せ人口約28万の都市圏を形成する。ロアール川とシェール川にはさまれた地域に発展した古都。トゥーレーヌ地方の主都で,行政,経済,文化の中心。大司教区本部と大学などがある。古くからパリと大西洋岸の地方を結ぶ交通の要衝および商都として栄えたが,近年ではロアール河畔の城めぐりの観光の拠点として名高い。おもな産業はボールベアリング,電子機器部品,化学,家具,衣服の製造業と印刷業。中世の面影をとどめる旧市街と大胆な都市計画による高層建築群とが鮮やかな対比を見せる。文豪バルザックの生地。
執筆者:稲生 永
4世紀トゥールの司教マルティヌスの墓の上に建てられたサン・マルタン修道院は,その聖遺物のゆえに繁栄し,アルクイン修道院長の下ではカロリング朝文化の一大中心地となり,いわゆる〈トゥール派〉写本がその写本工房で制作された。ロマネスク時代に再建された修道院付属教会は,サンチアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路教会形式をもつ大規模建築であったが,マルティヌス創始になるマルムーティエ修道院同様,大革命時代に破壊され,今日北トランセプト(袖廊)の〈シャルルマーニュの塔〉のほかわずかを残すのみである。サン・ガシアン大聖堂(13~16世紀)は各世紀の様式を示し,ステンド・グラス(13~15世紀)も知られる。市内には,マンテーニャ,カラバッジョらを所蔵する美術館(旧司教館)がある。
執筆者:岸本 雅美
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フランス中西部、アンドル・エ・ロアール県の県都でトゥレーヌ地方の中心都市。人口13万2820(1999)、13万6252(2015センサス)。パリの南西225キロメートルに位置し、ロアール川に臨む。鉄道、道路(高速道路を含む)など交通の要衝であり、ロアール川の城巡りの拠点となる観光都市でもある。農産物、ワインの集散地。パリとの交通が至便のためパリ地方からの工業分散の影響を受け、機械、電気、化学、出版などの近代工業が盛んであるほか、衣服、家具などの伝統工業もある。
[高橋伸夫]
古代ローマ人の征服を受けたのち、5世紀に入ると司教区として名声を博すようになり、マルタン・ド・トゥール(トゥールのマルティヌス)やグレゴアール・ド・トゥール(トゥールのグレゴリウスGregorius、540?―595)の司教の名がよく知られている。732年カール・マルテルがイスラム教徒の侵攻を撃退した戦闘「トゥール・ポアチエの戦い」の戦場としても歴史にその名を刻している。ナントの王令の撤回後、この町の経済は衰退に向かった。フランス革命時代は王党派バンデー人に抗する共和派の拠点となった。この町は1920年12月フランス社会党の第三インターナショナルへの加盟を決定した会議が開かれた所としても知られる。
[志垣嘉夫]
フランス東部、ムルト・エ・モーゼル県の副県都。ナンシーの西23キロメートルにあり、モーゼル川とマルヌ・ライン運河に沿う。旧名トルムTullum。人口1万6945(1999)。1944年以後修復された華麗なゴシック様式の正面をもつサンテティエンヌ寺院(12~15世紀)や、サン・ガングルト教会がある。タイヤ、機械、家具、既製服などが生産される。4世紀以来、司教座の所在地。中世には独立した司教都市となり、13世紀に自治権を獲得。1648年にフランスに併合された。プロイセン・フランス戦争でドイツ軍に占拠されたが、第一次世界大戦初期の攻撃は免れた。技師ボーバンの築いた城壁がある。第二次世界大戦中の1940年、1944年に戦禍を受けた。同大戦中、米軍の本部があった。
[大嶽幸彦]
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…ロアール川右岸の北部一帯はガティーヌ地方,左岸の東部はシャンペーニュ地方,西部はリシュレ地方,南部はサント・モールの丘陵地帯とよばれる。主要都市は主都のトゥールのほか,アンボアーズ,シノンなどである。温和な気候風土に恵まれているため,ブドウをはじめとする果樹,野菜の栽培や養鶏,牧畜が盛んで,古くから数多くの城塞,城館,館が建てられた。…
※「トゥール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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