日本大百科全書(ニッポニカ) 「全頭類」の意味・わかりやすい解説
全頭類
ぜんとうるい
[学] Holocephali
サメ・エイ類を含む板鰓(ばんさい)類(真板鰓亜綱Euselachii、板鰓下綱Elasmobranchii)とともに軟骨魚綱を構成する魚類の総称。軟骨魚類のなかでは特異な小さい一群で、全頭亜綱ギンザメ目のみを含むことから、ギンザメ類ともよばれる。鰓列は共通の1鰓孔によって開き、サメ・エイ類のように複数に分かれて体表に開かない。第1背びれは高くて前端に強い棘(とげ)がある。第2背びれは低くて基底が長い。脊椎(せきつい)骨の発達が悪く、脊索は終生円筒形でくびれることはない。上あごは頭蓋骨(とうがいこつ)と癒合する全接型。呼吸孔はない。雄は腹びれに交尾器があり、腹びれの前方にそれぞれ1個と前額部に1個、小棘(しょうきょく)が一面に生えた軟骨の突起を備え、交尾のときに雌を固定するのに使用する。卵生である。この類はサメ・エイ類と近縁であるが、原始的な化石種の板皮(ばんぴ)類と共通の祖先から分かれたとされている。この類には日本近海にも分布する、吻(ふん)が丸くて交尾器が二叉(にさ)または三叉したギンザメ科と、吻が長く突出し交尾器が分叉していないテングギンザメ科、そして南米やオーストラリア近海など南半球に分布し、吻が長くて鉤(かぎ)状に曲がったゾウギンザメ科を含んでいる。世界に48種現存している(2016年時点)。
[尼岡邦夫 2021年7月16日]