ギンザメ類のみを含む全頭(ぜんとう)類(全頭亜綱Holocephali)とともに軟骨魚綱を構成する魚類の総称。分類体系では真板鰓亜綱Euselachii、板鰓下綱Elasmobranchiiとして取り扱われるが、真板鰓亜綱は化石種(化石群)を含んだ体系であるため、現生種のみからなる板鰓下綱を、全頭亜綱に対して板鰓亜綱Elasmobranchiiとする研究者もいる。特殊な小グループであるギンザメ類を除いた現生のサメ・エイ類のすべてが含まれ、古くは横口類(おうこうるい)Plagiostomiともいわれていた。過去には現生のサメ・エイ類のなかのラブカ類、ネコザメ類およびカグラザメ類はその他のものとは異なった化石群に由来する系統群と考えられていたが、形態および分子による系統解析によって、現生のすべての板鰓類は単系統群とみなされている。この類は鰓孔(さいこう)が5~7個で独立に開くこと、内部骨格が軟骨であること、頭蓋骨(とうがいこつ)は一続きの軟骨の箱であること、脊椎骨(せきついこつ)の椎体が発達し、脊索(せきさく)は椎体ごとにくびれること、あごの歯が数枚の臼歯(きゅうし)状の歯板を形成しないこと、第1背びれは固定していて自由に倒伏できないこと、尾びれは異尾であること、体表は普通は粗雑な楯鱗(じゅんりん)で覆われること、雄の腹びれに交尾器が発達し、体内受精をすること、腸に螺旋弁(らせんべん)を備えること、鰾(ひょう)(うきぶくろ)を欠くことなどの特徴をもつ。
古生代デボン紀中期に出現し、古生代から中生代にかけて進化して現代のサメ・エイ類へと進化した。現存する板鰓類は鰓孔が側方に開くサメ類(サメ区)Selachiiと腹面に開くエイ類(エイ区)Batomorphiに大別されるが、一群として取り扱う研究者もいる。サメ類はさらに臀(しり)びれがあるネズミザメ・メジロザメ上目Galeomorphiと臀びれがないツノザメ上目Squalomorphi(ただしカグラザメ目には臀びれがある)に分かれる。前者にはネコザメ目、テンジクザメ目、ネズミザメ目およびメジロザメ目が、後者にはカグラザメ目、キクザメ目、ツノザメ目、カスザメ目およびノコギリザメ目が含まれる。エイ類はシビレエイ目、ガンギエイ目、ノコギリエイ目およびトビエイ目からなる。ただし、目の設定は研究者によって異なる。たとえばここでは、サメ類ではラブカ目がカグラザメ目に統合され、キクザメ目が新設されている。エイ類ではトンガリサカタザメ目とサカタザメ目がノコギリエイ目に統合されている。2017年時点では、サメ類は34科519種、エイ類は17科636種が現存する。
サメ類にはオナガザメ、シュモクザメ、メジロザメなどのように遊泳力があり、肉食性の強い種が多いが、なかにはクラカケザメCirrhoscyllium japonicum、オオセなどのように海底にすむもの、カラスザメ、チヒロザメなどのように深海にいるもの、プランクトンを濾(こ)して食べるジンベエザメやウバザメもいる。また、1976年に初めて発見された科として話題になったメガマウスザメがいる。エイ類は底生生活によく適応するように進化したグループであるが、トビエイ類や、オニイトマキエイMobula birostris(通称マンタ)などを含むイトマキエイ類には多くの遊泳性の種がいる。
[落合 明・尼岡邦夫 2021年7月16日]
軟骨魚綱板鰓亜綱Elasmobranchiiに属する魚類の総称。一般にはサメ・エイ類という。板鰓とは鰓弁(さいべん)が板状に配列することに由来する。現生種は全世界に800~850種が分布し,熱帯から寒帯域,沿岸の浅瀬から数千mの深海までの広い範囲に生息する。なかには淡水域で一生を終える種類もある。大きさは十数cmから18mに達するものまでさまざまである。同じ軟骨魚類である全頭亜綱(ギンザメ類)とは,えらは片鰓で鰓裂が5~7対あり,各鰓裂は別々に外通する,背びれや背びれの棘(きよく)を自由に倒すことができない,歯が多く各歯は癒合しない,上あごは頭蓋骨と全部分で癒着しない,総排出孔がある,雄には腹びれ前部と前額に交尾用の把摑(はかく)器がないなどで区別される。生殖様式は卵生,卵胎生,胎生の三通りある。食性はすべて動物食で,一部の種類は餌をこし取る鰓耙(さいは)をもつ。人間に危害を加えたり,漁業に被害を与えたりするが,肉,ひれ,皮膚などが利用されることもある。
→エイ →サメ
執筆者:谷内 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…鼻孔は1対で多くの種類では口の前方に開いており,ときには口と鼻をつなぐ鼻口溝(びこうこう)を有する(テンジクザメ類やアカエイ類)場合もある。えらは櫛(くし)状で,板鰓類では片鰓(へんさい),全頭類では全鰓となる。少なくとも胚期には噴水孔がある。…
※「板鰓類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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