板皮類(読み)バンピルイ(その他表記)placoderm

デジタル大辞泉 「板皮類」の意味・読み・例文・類語

ばんぴ‐るい【板皮類】

シルル紀に出現し、石炭紀に絶滅した原始的な魚類。体の大部分が硬い骨板で覆われているので、甲冑魚かっちゅうぎょともよばれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「板皮類」の意味・わかりやすい解説

板皮類 (ばんぴるい)
placoderm

魚類上綱の1綱Placodermiで,古生代シルル紀の後期から石炭紀の初期にかけて生息した。頭部胸部は厚い装甲に覆われ,頭甲と胸甲は左右で関節していた。軟骨魚類硬骨魚類に見られるような歯をもたず,顎骨板が露出して,なたのような形をしており,これで獲物をかみ切ったと思われる。板皮類はほとんどが肉食性で,その代表的なものは節頸類(コッコステウス目)である。全長数mに達したと思われるダンクルオステウスDunkleosteusが有名である(昔はディニクチスとされていた)。節頸類の中には軟骨魚類に見られるような体内受精のための交尾器官をもっていたものもあり,軟骨魚綱の直接の祖先を含むと考えられている。板皮類はデボン紀に大いに繁栄し,水底生活,表層・中層の生活に適応したものと多様化した。フィロレピス目は小型で扁平な形をしている。外骨格は頭甲が大きくなり胸甲は退化して小さくなっており,水底生活をしていたと思われる。マクロペタリクチス目の魚類も体が縦扁(上下から押しつぶされて平らになったような形)し,眼が背面にあった。背面に3個の隆起のあるうろこをもったルナスピスなどがこれに属する。ゲムエンディナ目の魚はやはり体が縦扁し,現在のエイ類のような形をしており,堅鮫(けんこう)類とよばれることもある。エイの祖先というよりも,水中での生活様式が似ていたための収れん進化的類似と考えられている。アステロレピス目の魚では胴甲が大きく発達し,頭甲は退化している。眼と鼻孔は頭部の中央近くにある。胴甲類ともよばれる。この類では胸びれ形態に特徴がある。胸びれは完全に骨板に包まれ,肩の部分に関節している。口は小さく腹面についている。初期のものは体がうろこで覆われていたが,後に出現したものは無鱗であった。尾びれは上葉が発達した異尾であった。ボトリオレピスBothriolepisは中国でも発見されている。板皮類は日本からは発見されていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「板皮類」の意味・わかりやすい解説

板皮類
ばんぴるい
[学] Placodermi

脊索(せきさく)動物門Chordata、脊椎(せきつい)動物亜門Vertebrataあるいは頭蓋(とうがい)亜門Craniata、顎口(がっこう)上綱Gnathostomataに属する化石魚類の総称。あごをもった魚類としてもっとも古く、古生代上シルル紀からデボン紀にかけて出現し、デボン紀から石炭紀に栄え、2億8000万年余り前のペルム紀(二畳紀)に滅亡した。デボン紀の中ごろまでは淡水で生活をしていたが、その後は海洋へも進出した。しかしデボン紀の終わりごろ、急に軟骨魚類にとってかわった。体は底生生活に適応し、縦扁(じゅうへん)したものが多い。外敵から身を守るため、体の前半部または大部分が頑丈な骨板で包まれており、尾びれや背びれ、臀(しり)びれのほかに、未発達ながら胸びれや腹びれをもつようになった。

 この類の化石はほとんど全世界から発見されている。いくつかのグループがあるが、アースロディラ目Arthrodiriformesはその代表的なグループの一つである。体は側扁し、大きさ6メートル、ネクトン(遊泳生物)などを食べる肉食性で、あごの骨は強く、口の中に何枚かの歯板がある。また、世界各地に生息したアンチアーチャ目Antiarchiformesは、鰓孔(さいこう)が1個で鰓蓋(さいがい)があり、翼のように長く突き出た胸びれをもっていた。また、外形や内部の骨格がギンザメを含むサメ類に似たものもある。この類は系統的にすべての高位の顎口類(軟骨魚類、棘魚(きょくぎょ)類、硬骨魚類)と姉妹関係にあるとする説がある一方、軟骨魚類だけと、あるいは硬骨魚類だけと姉妹関係にあるとする説もある。堅い骨板で包まれた謎(なぞ)の多い原始魚である。

[落合 明・尼岡邦夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「板皮類」の意味・わかりやすい解説

板皮類
ばんぴるい
Placodermi

脊椎動物門板皮魚綱に属する絶滅魚の仲間。胴甲目,節頸目など6目に分けられる。甲板に包まれた魚類で,シルル紀に出現,デボン紀に栄え,ペルム紀に絶滅した。

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世界大百科事典(旧版)内の板皮類の言及

【甲】より

…この骨板の表面を現在のサメの体表のように,歯と同様のものが覆いつくしている種類があった。 無顎類より遅れて現れた板皮類というグループでは,頭部が堅固な骨格をもっていた上,肩から胸にあたる部分ががんじょうな骨板に覆われ甲のようになっていたが,その実態は十分明らかでない。これらの原始魚類の内骨格は軟骨性であったらしい。…

【脊椎動物】より

…残りのものはすべてあごと対鰭(または四肢)を獲得した顎口類Gnathostomataに属し,オルドビス紀中期に無顎類から分かれたと推定されている。この類で最古のものはシルル紀後期に現れ二畳紀まで栄えた板皮類(綱)Placodermiで,これから最初に分かれた(オルドビス紀後期)のが軟骨魚類Chondrichthyesと推定されているが,これの化石は,やはり板皮綱から分かれデボン紀前期に現れた硬骨魚類Osteichthyesよりも後のデボン紀中期にならないと姿を見せない。硬骨を獲得した硬骨魚綱の中の総鰭類(亜綱)Crossopterygiiから分かれ,四肢と肺を獲得した両生類Amphibiaはデボン紀から石炭紀への移行期,両生綱から分かれ羊膜を獲得した爬虫類Reptiliaは石炭紀後期,爬虫類の祖竜亜綱Archosauriaから分かれ羽毛を獲得した鳥類Avesはジュラ紀前期,同じく爬虫綱の単弓亜綱Synapsidaから分かれ毛と乳腺および3個の中耳小骨を獲得した哺乳類Mammaliaは三畳紀後期に現れている。…

※「板皮類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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