共観福音書問題(読み)きょうかんふくいんしょもんだい(英語表記)the synoptic problem

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共観福音書問題」の意味・わかりやすい解説

共観福音書問題
きょうかんふくいんしょもんだい
the synoptic problem

新約聖書中,共観福音書と呼ばれる『マタイによる福音書』『マルコによる福音書』『ルカによる福音書』には,その素材の内容配列語句に大幅かつ基本的な一致が見出されるとともに大小無数の相違存在するところから,3福音書間の類縁関係を説明することが新約聖書学上の重要問題となった。古代以来の伝統的見解によれば,『マタイ』が最初に成立し,他の2福音書はこれに依存するとされたが,18世紀以後の研究の進歩とともに多くの学説が唱えられ,いまだに一致がみられない。現在最も広く受入れられているのは,『マルコ』を最初の福音書とし,『マタイ』と『ルカ』はこれとQ資料を利用して書かれたとする二資料説,また二資料説の基礎のうえに『マタイ』『ルカ』それぞれの固有資料 (M,Lと略記される) を想定する四資料説である。しかし現在ではマルコ優先説がほぼ確立しているが,Q資料の想定には強い反対がある。このほか,マタイとルカの利用したのは,現行『マルコ』とは異なるとするプロト・マルコ説,最初に成立したのはQ+Lを内容とするというプロト・ルカ説,さらに3福音書間の直接の文書利用,依存の関係を否定し,3者に共通の口伝伝承の存在を想定する古い学説を継承する学者もあり,現在なお議論が絶えない。

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