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内容分析 ないようぶんせきcontent analysis

翻訳|content analysis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

内容分析
ないようぶんせき
content analysis

一般には研究,調査対象の分析をいうが,本項では,コミュニケーションの内容をある一定の方式に従って,その特徴を分析,客観化する研究方法をいう。 19世紀末のアメリカで新聞の内容の退廃とその社会的悪影響を糾弾する声が強まったとき,そのような主張を立証あるいは批判するために内容分析の手法が開拓されはじめた。 1893年にニューヨークの4つの日刊紙を分析した J.スピードの試みなどが,最も初期のものである。 1930年代に政治学者 H.ラスウェルらが,世論や宣伝の研究にこれを導入し,第2次世界大戦中に発展させた。現在はマス・コミュニケーション研究で利用されることが多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

内容分析
ないようぶんせき
content analysis

コミュニケーションでやりとりされる情報内容のうち、とくに手紙や書籍、新聞記事など、発信された結果が残されているものを第三者の立場から客観的にとらえた場合に、それをテクストtextとよぶことが多く、このテクストをある一定の仮説のもとに客観的に分析する手法を内容分析とよぶ。文学の解釈や映画批評なども広義の内容分析に含める場合もあるが、社会科学において内容分析とよぶ場合、通常は以下の条件を整えていなければならない。
(1)分析対象が明示的な内容であること。
(2)分析が客観的であること。すなわち、分析が同じ内容に適用されるかぎり、分析者や分析時期が異なっても同じ結果が出ること。
(3)分析がある規則に従って行われ体系的であること。[橋元良明]

内容分析の方法

内容分析では通常、テクストにあらわれた特定のシンボル、命題、人物などを分析単位とし、それらの出現頻度や出現スペース、評価・描写のされ方などを、あらかじめ設定したカテゴリーと判断基準によって分析する。多くの内容分析は、結果が数量的なデータとして処理される量的分析である。しかし、政治宣伝から背後の意図を看破したり、精神的疾患の治療に援用される場合など、結果は数値化されないが、きわめて有用な質的分析も多く存在する。その場合、上記の条件(2)(3)はやや基準の厳密性が緩和される。内容分析が分析対象とするのはメッセージであるが、何が、どのように記述、表現、報道されているかという分析のほか、送り手の意図や受け手の心理状況、それによる社会的効果・影響などが結果的に分析される場合も多い。また、メッセージの形態も新聞記事や書簡、小説などの文字言語以外に、講演、放送などの音声言語、ジェスチャーや写真、映像などの視覚情報も分析対象となる。[橋元良明]

研究領域

社会学的関心から行われた最初の内容分析は、G・I・スピードが1893年に実施した「今、新聞はニュースを提供しているのか?」と題する分析であり、ニューヨークの主要紙の記事をテーマごとに分類し、ゴシップ、スポーツ、スキャンダルを扱った記事が増加してきたことを数字で裏づけした。1930年代後半からは政治宣伝や世論に対する関心の増加から、政治学者も巻き込んだ大がかりな内容分析が実施され始めた。なかでも有名なのが、ラスウェルの『関心についての国際調査』である。彼は数か国の権威紙のなかに登場する国家的シンボルを「自己」「他者」「価値付与」「価値剥奪(はくだつ)」などのカテゴリーに分類し、その登場頻度を国際比較した。
 内容分析の手法は、社会学、ジャーナリズム研究の分野だけでなく、ほとんどあらゆるジャンルの人文社会系科学に使われるようになった。その例としては次のものがあげられる。
(1)プロパガンダ(宣伝)の分析 リー夫妻による効果的な七つの技法の分析が有名(社会的な権威者を引き合いに出す「証言利用」や、時流に遅れたくないという心理につけこみ同調行動に駆り立てる「バンドワゴン=楽隊馬車」などの技法)
(2)文学研究 文体分析、作者の同定など
(3)政治学 外交文書の分析など
(4)心理学 性格や不安度の分析など
(5)文化人類学 民話の分析など
 また、1980年代以降は、膨大なデータを扱うためにコンピュータを援用した新しい手法も開発されている。日本では伝統的手法による内容分析の例として、春原昭彦(あきひこ)らによる「戦時報道の実態」(『コミュニケーション研究』第11号所収、1978)、内川芳美(よしみ)・川竹和夫・野崎茂による「テレビニュースの国際比較」(テレビ報道研究会編『テレビニュース研究』所収、1980)などがある。
 アメリカでは、犯罪増加にかかわるテレビの影響が頻繁に議論されているが、この問題に関しては、ガーブナーGeorge Gerbner(1919― )らが1967年にテレビ番組分析を開始し、その成果は69年に米国議会に答申された「暴力の原因ならびに阻止に関する委員会への報告」にも取り込まれた。彼による内容分析研究は1990年代まで継続され、番組の放送基準の検討材料としてたびたび引用されている。1990年以降、アメリカでは大きなプロジェクトを組織した大規模な分析がいくつか行われ、たとえば四大ネットワークの委託による「UCLA(カリフォルニア大学ロサンジェルス校)調査」(1994~98)や全米ケーブルテレビ事業者連盟(NCTA)の委託によるUCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)を中心とした「全米テレビ暴力研究」(1994~98)なども、テレビ番組の内容分析に関して大きな成果をあげている。日本では岩男寿美子(いわおすみこ)らがガーブナーと同じ手法を用いて、日本の娯楽番組上に登場する暴力描写の内容分析を1977年から94年にかけて実施している。[橋元良明]
『B・ベレルソン著、稲葉三千男・金圭煥訳『内容分析』(『社会心理学講座』所収・1957・みすず書房) ▽辻村明著『戦後日本の大衆心理』(1981・東京大学出版会) ▽K・クリッペンドルフ著、三上俊治・椎野信雄・橋元良明訳『メッセージ分析の技法――「内容分析」への招待』(1989・勁草書房) ▽高橋順一・渡辺文夫・大渕憲一編著『人間科学研究法ハンドブック』(1998・ナカニシヤ出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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