円積問題(読み)えんせきもんだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「円積問題」の意味・わかりやすい解説

円積問題
えんせきもんだい

与えられた円と同じ面積をもつ正方形を定木とコンパス作図できるか、という問題をいう。古代ギリシアの三大作図不能問題のうちの一つである。半径1の円の面積はπであるから、この問題はの長さの線分を定木とコンパスで作図できるか、という問題と同じである。

 有理数係数とする多項式(係数が全部ゼロである場合を除く)の根(こん)になっている複素数実数の場合も含む)を代数的数といい、代数的数でない複素数(実数の場合も含む)を超越数という。単位の長さが与えられたとき、これから定木とコンパスで作図できる線分の長さは代数的数である。もしが作図できれば、πも作図でき、したがってπは代数的数でなければならない。1882年リンデマンC. L. F. Lindemann(1852―1939)によってπは超越数であることが証明されたため、円積問題は作図不能であることが示された。

[菅野恒雄]

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百科事典マイペディア 「円積問題」の意味・わかりやすい解説

円積問題【えんせきもんだい】

与えられた円と等しい面積をもつ正方形を作る作図問題。前5世紀ごろからギリシアで研究された。定規とコンパスを有限回使ったのでは作図不能で,このことは1882年リンデマンが円周率πが超越数であることを証明したため確認された。→円周率円理作図不能問題

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「円積問題」の意味・わかりやすい解説

円積問題
えんせきもんだい
quadrature of a circle

の正方形化,すなわち与えられた円と等しい面積の正方形を作図することをいう。古代においてこの問題は,重要な未解決の作図題と考えられていた。しかし,与えられた円の周と同じ長さの直線,あるいは与えられた円と同じ面積の正方形を作図することは,円周率超越数なので,不可能である。このことは 1882年に,ドイツの数学者フェルディナント・フォン・リンデマン(1852~1939)によって明らかにされた。

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世界大百科事典(旧版)内の円積問題の言及

【作図不能問題】より

…古代ギリシアの幾何学者によって扱われた使用器具を定規とコンパスに限定する平面図形の作図がもっともよく知られているが,これに関する次の三つの問題がとくに著名である。(1)与えられた角を3等分すること(角の3等分問題),(2)与えられた立方体の体積の2倍の体積をもつような立方体を作ること(立方体倍積問題),(3)与えられた円と等しい面積をもつ正方形を作ること(円積問題)。これらの問題は前5,6世紀ごろからギリシアの幾何学者によって研究され,執拗(しつよう)にその解法が求められたのであるが,解決をみず,ギリシア数学の三大問題として後世に残された。…

※「円積問題」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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