分一銭(読み)ぶいちせん

改訂新版 世界大百科事典 「分一銭」の意味・わかりやすい解説

分一銭 (ぶいちせん)

中世近世において,基準額の何分の1かを徴収する臨時的な賦課。(1)室町幕府の発布した徳政令のうちに,債権債務額の5分の1ないし10分の1の分一銭を幕府に納入する条件で,債権の確認または債務の破棄を認めるとするものがあり,分一徳政令と呼ばれた(分一徳政)。(2)江戸時代における雑税の一種として徴収されたもの。商業漁業,林業などの収益物に対し,売上高・収穫高の何分の1かを賦課する。臨時的で税額が不定であったところから浮役とも呼ばれ,多くは金納であった。鰯分一,鯨分一,市売(いちうり)分一などがあった。
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旺文社日本史事典 三訂版 「分一銭」の解説

分一銭
ぶいちせん

室町幕府の収入の一つ
債権・債務額の5分の1ないしは10分の1の手数料を幕府に納入すれば,債権者は徳政の適用を免かれ,債務者は債務が破棄される。この手数料を分一銭という。

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百科事典マイペディア 「分一銭」の意味・わかりやすい解説

分一銭【ぶいちせん】

徳政

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世界大百科事典(旧版)内の分一銭の言及

【徳政一揆】より

…京都に呼応した他の地方では,守護などの地方権力が徳政令を出し,また郷村単位に徳政を施行したところもあった。41年(嘉吉1)の嘉吉の土一揆のときには幕府の徳政令がかちとられたが,47年(文安4)には徳政禁制,54年(享徳3)は分一銭(ぶいちせん)(債務額の10分の1)を幕府に納めた者だけに認める分一徳政令,57年(長禄1)は逆に債権者に分一銭を納入させてその債権を保障する分一徳政禁制になった。土一揆参加者が幕府の徳政令から直接恩恵を被る可能性はますます小さくなったのである。…

【分一】より

…江戸時代における雑税の一種。その内容は,(1)商業,漁業,山林業などに従事する者からその売上高,収穫高の何分の1かを徴収するもの,(2)幕府が特定の河川に沿って分一番所を設け,通行荷物から何分の1かの分一銭を徴収するもの,がある。(1)については,江戸時代の田制,税制についての代表的な手引書である《地方凡例録(じかたはんれいろく)》によると,鰯分一,鯨分一,市売分一,請山分一などの例が紹介されている。…

【分一徳政】より

…室町幕府の発布した徳政令のうちで,債権額・債務額の5分の1ないし10分の1の分一銭を幕府に納入することを条件に,債権の確認または債務の破棄を認めたもの。室町幕府が発布した最初の徳政令は1441年(嘉吉1)のそれであるが,幕府の命令によって質物の返却が行われた結果,質物の員数を基準に賦課していた土倉役の納入が停止してしまった。…

※「分一銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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