江戸時代の雑租の一種。戦国時代に浮役とは,浮役衆または浮勢(うきぜい),浮備(うきそなえ)ともいわれて予備軍を指すが,近世には年貢の一種と理解されている。年貢は田畑にかかる正租の本途物成(ほんとものなり)と,それ以外の山林,原野,河海などにかかる雑租の小物成に大別することができ,小物成はさらに毎年,定額でかかるものと,臨時にかかるものとに分かれるが,臨時にかかるものを浮役という。地方によっては浮物成とも,浮小物成,散(ちり)小物成ともいう。具体的には,水車運上,浦運上,酒運上,質屋冥加,川役,網役などや,商業,漁業,山林業に従事するものから収穫高・売上高の何分の1かを納めさせる何分一役に至るまで,多くの雑租はこの浮役に属する。浮役とは浮動して定まらない雑租の意味で,多くは金納であった。領主によって財源の一つとして注目され,種類も多様化した。明治になって雑税として存続したが,地租改正の進行によって消滅した。
執筆者:吉永 昭
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江戸時代において、田畑、屋敷などに賦課された年貢(物成(ものなり))以外の雑税の一種で、小物成(こものなり)の一部に属する。郷帳(ごうちょう)に記載して年々一定額を納めるものを小物成(定納(じょうのう)小物成)といい、「郷帳外書」に記載して年季を限って納めるもの、その納入額が増減するもの、あるいは「郷帳外書」にも記載せずに臨時的に納めるものを浮役という。何々役、何々永、何々分一、何々運上、何々冥加永(みょうがえい)などというものがほぼ浮役に属する。これらのもののなかには郷帳に記載されて小物成に属するものもある。小物成は村高に結ばれず、村高の外に置かれるのが原則であるが、旗本への知行(ちぎょう)渡しの節、小物成は知行高に入れ、浮役は知行高に入れないのが原則であった。
[川鍋定男]
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…前者は小物成に属し,後者は献金に属するが,現実には運上も冥加も同一の意味に混同して使われている場合が多い。さらに,運上・冥加はともに年期を限り,あるいは,年によって増減することがあるので,その意味では小物成の中の浮役(うきやく)に含まれる。運上の種類は多く,地域によって特殊な名称をもつものも多い。…
…江戸時代には地域や支配領主によって多様であり,明治初年の調査では2000余品目と数えられ,その税率も一定していなかった。これらの雑税には大別して,(1)狭義の小物成,(2)浮役(うきやく)の2種が含まれていた。(1)狭義の小物成は,山林原野,河海池沼など,検地を受けない土地を対象として賦課されたもので,この中には例えば山年貢,野年貢,草年貢のように,対象地の面積(反別)を計測してこれに課したものと,山役,山手米,野手米,海役,池役などのように,反別を定めることなく,高外地の用益権に賦課したものがある。…
…江戸時代の年貢で,田・畑・宅地など検地によって高に結ばれた土地に賦課された本年貢で,たんに本途または物成とも略す。同じく農民に賦課されたものであっても,山野・河川の用益に課せられた小物成(こものなり),冥加(みようが)・運上金などの浮役(うきやく),普請・助郷(すけごう)などに夫役(ぶやく)を提供する諸役と区別される。通例,田方の物成は米の現物納であり,畑方の物成は石高(こくだか)で算定されても金銀で代納されることが多い。…
※「浮役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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