力紙(読み)チカラガミ

デジタル大辞泉 「力紙」の意味・読み・例文・類語

ちから‐がみ【力紙】

力の強くなることを祈って、んで丸めた紙を仁王像に投げつけること。また、その紙。
とじ目や合わせ目などを補強するために張る紙。
相撲で、土俵上の力士がからだを拭い清める紙。半紙半分に切ったもの。化粧紙
歌舞伎荒事かつらにつける紙。

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精選版 日本国語大辞典 「力紙」の意味・読み・例文・類語

ちから‐がみ【力紙】

〘名〙
① 力が強くなるように祈願して、仁王尊の像に、歯でかんで丸めて投げつける紙。
※波形本狂言・歌仙(室町末‐近世初)「ちからの願の有者は紙をかふで力(チカラ)紙とやらいふて」
② 相撲で、土俵の傍に用意し、力士がからだをぬぐい清めるなどして用いる紙。化粧紙。また、力士のもとどりを結んだ紙。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第四〇「なんの手もないとったり相撲 力紙一枚二まい露ちりて」
神楽で、呪力を持つものとして使用される紙。山伏神楽では、特に荒舞(あらまい)を舞う舞手の指に結ぶ紙。歌舞伎では、荒事の人物の鬘(かつら)につける。
葬列の野道具の一つである力杖(ちからづえ)に結びつける紙。洗米などを包んでいった紙を細く折って用いる。
※野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉「政夫さん、あなた力紙を結んで下さい」
綴目(とじめ)、あわせ目などを補強するためにはる紙。
⑥ たのみにし得る紙。力になる紙。
※俳諧・時勢粧(1672)二「ふすまこそ寒さをふせぐ力がみ」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「力紙」の意味・わかりやすい解説

力紙
ちからがみ

(1) 化粧紙ともいう。正式名称は「紙」。相撲で,東西行司だまりに備え置き,土俵に上がった力士が身体を拭き清めたり水をつけた口をぬぐうのに使う半分に切った半紙。また,土俵上で乱髪となった力士の髻 (もとどり) をこの紙で結うことから,結髪の紙ともいう。 (2) 山門の仁王像の前で力の強くなることを祈って,仁王像に投げつける紙。 (3) 製本の際に綴目を補強するためにはり添える紙。

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世界大百科事典(旧版)内の力紙の言及

【歌舞伎】より

…劇中,捕物や殺し場などで演ずる太刀打や争闘技の称で,古来一座には専門の立師(たてし)がいて立回りの型を考案し,その型をタテという。 力紙(ちからがみ)荒事役の鬘の髻(もとどり)につける装飾用の奉書紙をいう。《暫》や《押戻》,《寺子屋》の松王,《対面》の朝比奈などで用いる。…

※「力紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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