日本大百科全書(ニッポニカ) 「動物衛生研究所」の意味・わかりやすい解説
動物衛生研究所
どうぶつえいせいけんきゅうしょ
農業・食品産業技術総合研究機構の傘下に置かれていた研究所。現在は同機構の研究部門の一つ(動物衛生研究部門)となっている。細菌、寄生虫、原虫、ウイルス、プリオン、リケッチアなどによる家畜を中心とした動物の疾病とその病理、それらに対する生物学的製剤(ワクチン、抗血清など)についての調査と試験研究、および製剤の製造を行う。
動物衛生研究所は、1921年(大正10)に獣疫調査所として発足し、1947年(昭和22)に家畜衛生試験場となり、1979年に茨城県つくば市に移った。2001年(平成13)3月までは農林水産省家畜衛生試験場と称したが、2001年4月、独立行政法人農業技術研究機構の発足に伴い、動物衛生研究所と改称された。農業技術研究機構は、その後若干の組織の変遷を経て、2015年4月に国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構となる。2016年4月に同機構が農業生物資源研究所などと統合・再編された際、専門研究組織の再編も行われ、動物衛生研究所は動物衛生研究部門となった。2017年時点では、茨城県つくば市、北海道札幌市、東京都小平(こだいら)市(海外病研究拠点)、鹿児島県鹿児島市に研究拠点がある。また、家畜の保健衛生および診療についても広く調査研究を行い、日本における家畜伝染病の防疫、保健衛生の中心的・指導的役割を担うほか、牛海綿状脳症(BSE)や高病原性鳥インフルエンザなどの研究業務も引き継がれている。人獣共通感染症の防除などにも取り組んでいる。
[本好茂一・編集部 2017年7月19日]