ウイルスや寄生虫が原因で家畜がかかる伝染力の強い病気。日本では家畜伝染病予防法で、病気が発生した際の対応を定めている。近年では、殺処分の対象となる高病原性鳥インフルエンザと、牛や豚などに感染する
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家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)において、発生の予防や蔓延(まんえん)の防止のために具体的な対策が定められている家畜の伝染性疾病のなかで、もっとも重要な28種類の伝染病をいう。家畜の群飼育でもっとも危惧(きぐ)されるのが、動物の間で相互に病気に感染すること、および動物の病気が人間に感染することである。このため国では家畜伝染病予防法を制定し、伝染病の蔓延を防ぐように配慮している。日本で発生したことがある、または発生が危惧されている家畜伝染病としては、口蹄疫(こうていえき)、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザなどがある。
家畜伝染病の感染が疑われる家畜や家禽(かきん)を発見した獣医師またはその動物の所有者は、都道府県の知事(実際には家畜保健衛生所)に速やかに報告する義務がある。家畜保健衛生所と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の動物衛生研究部門は、これらの動物から採取されたぬぐい液や臓器中に家畜伝染病の病原体が存在するかどうかを診断する。家畜伝染病に感染していると判定された動物(患畜)、および患畜と同じ畜舎で飼育されていたことにより感染の疑いのある動物(疑似患畜)については、家畜防疫員が感染症の蔓延防止を目的として該当する家畜を殺すよう、所有者に命じる。これらの死体は、農林水産省令の基準に従って焼却または埋却し、病原体が他へ伝播(でんぱ)しないように処分する必要がある。また家畜防疫員は、これらの動物が飼養されていた畜舎などを消毒するよう所有者に命じる。さらに家畜伝染病の蔓延を防止するため、知事は家畜や家禽の移動や、競馬や家畜市場の開催を制限するよう指示する。なお、家畜伝染病予防法では、1997年(平成9)より家畜伝染病と家畜伝染病に準じる届出伝染病(71種類)をまとめて「監視伝染病」とよび、新興・再興感染症など、病性の不明な疾病を「新疾病」として、ともに獣医師が発生を発見した場合には届け出なければならないと規定している。
一方、同法では外国からの動物またはその死体、骨、肉、卵など、または皮毛類およびその容器に至るまで、輸入時には検疫を受け、輸入検疫証明書の交付を受けることが定められている。日本では、国内の伝染病の防疫、または外国からの病畜の輸入などにおける検疫(動物検疫)はきわめて厳重に実施されているため、家畜伝染病の侵入、伝播はほぼ防圧されている。しかし、病原体が付着した衣服や汚染畜産物を個人旅行者が国内にもち込むことを完全に防ぐことはできないので、農場における衛生対策の強化も重要である。
また、家畜伝染病には、人間に感染するもの(人獣共通感染症)があり、狂犬病のように特別の法律(狂犬病予防法)によって、予防液の定期注射を義務づけて完全防圧を図っている疾病もある。
[本好茂一・迫田義博 2024年6月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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