家畜伝染病(読み)カチクデンセンビョウ

デジタル大辞泉 「家畜伝染病」の意味・読み・例文・類語

かちく‐でんせんびょう〔‐デンセンビヤウ〕【家畜伝染病】

家畜伝染病予防法によって定められた家畜がかかる伝染病で、特に伝染性が強く一群の家畜を一時に失うおそれのある疾病。平成9年(1997)より、同法では家畜伝染病と届出伝染病をまとめて監視伝染病とよぶ。家畜伝染病には、狂犬病牛疫豚熱ぶたねつCSF)・炭疽たんそなどが指定されている。家畜法定伝染病

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共同通信ニュース用語解説 「家畜伝染病」の解説

家畜伝染病

ウイルス寄生虫が原因で家畜がかかる伝染力の強い病気。日本では家畜伝染病予防法で、病気が発生した際の対応を定めている。近年では、殺処分の対象となる高病原性鳥インフルエンザと、牛や豚などに感染する口蹄こうてい疫がアジアで継続して発生。人や動物の移動で感染が広がり、早期の封じ込めが必要なため、国際的な連携が重要とされている。

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精選版 日本国語大辞典 「家畜伝染病」の意味・読み・例文・類語

かちく‐でんせんびょう‥デンセンビャウ【家畜伝染病】

  1. 〘 名詞 〙 牛、馬、豚などの家畜がかかる伝染病。特に強い伝染力を持ち、被害の大きい牛疫、狂犬病、馬伝染性貧血豚コレラなどは、家畜法定伝染病として指定されている。獣疫。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「家畜伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜伝染病
かちくでんせんびょう

家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)において、発生の予防や蔓延(まんえん)の防止のために具体的な対策が定められている家畜の伝染性疾病のなかで、もっとも重要な28種類の伝染病をいう。家畜の群飼育でもっとも危惧(きぐ)されるのが、動物の間で相互に病気に感染すること、および動物の病気が人間に感染することである。このため国では家畜伝染病予防法を制定し、伝染病の蔓延を防ぐように配慮している。日本で発生したことがある、または発生が危惧されている家畜伝染病としては、口蹄疫(こうていえき)、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザなどがある。

 家畜伝染病の感染が疑われる家畜や家禽(かきん)を発見した獣医師またはその動物の所有者は、都道府県の知事(実際には家畜保健衛生所)に速やかに報告する義務がある。家畜保健衛生所と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の動物衛生研究部門は、これらの動物から採取されたぬぐい液や臓器中に家畜伝染病の病原体が存在するかどうかを診断する。家畜伝染病に感染していると判定された動物(患畜)、および患畜と同じ畜舎で飼育されていたことにより感染の疑いのある動物(疑似患畜)については、家畜防疫員が感染症の蔓延防止を目的として該当する家畜を殺すよう、所有者に命じる。これらの死体は、農林水産省令の基準に従って焼却または埋却し、病原体が他へ伝播(でんぱ)しないように処分する必要がある。また家畜防疫員は、これらの動物が飼養されていた畜舎などを消毒するよう所有者に命じる。さらに家畜伝染病の蔓延を防止するため、知事は家畜や家禽の移動や、競馬や家畜市場の開催を制限するよう指示する。なお、家畜伝染病予防法では、1997年(平成9)より家畜伝染病と家畜伝染病に準じる届出伝染病(71種類)をまとめて「監視伝染病」とよび、新興・再興感染症など、病性の不明な疾病を「新疾病」として、ともに獣医師が発生を発見した場合には届け出なければならないと規定している。

 一方、同法では外国からの動物またはその死体、骨、肉、卵など、または皮毛類およびその容器に至るまで、輸入時には検疫を受け、輸入検疫証明書の交付を受けることが定められている。日本では、国内の伝染病の防疫、または外国からの病畜の輸入などにおける検疫(動物検疫)はきわめて厳重に実施されているため、家畜伝染病の侵入、伝播はほぼ防圧されている。しかし、病原体が付着した衣服や汚染畜産物を個人旅行者が国内にもち込むことを完全に防ぐことはできないので、農場における衛生対策の強化も重要である。

 また、家畜伝染病には、人間に感染するもの(人獣共通感染症)があり、狂犬病のように特別の法律(狂犬病予防法)によって、予防液の定期注射を義務づけて完全防圧を図っている疾病もある。

[本好茂一・迫田義博 2024年6月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「家畜伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜伝染病
かちくでんせんびょう

ウイルスマイコプラズマリケッチア,真菌,原虫,寄生虫などの病原微生物が家畜に感染して引き起こす疾病(感染症)のうち,特に伝播性の顕著なもの。伝染病は一般に感染源,感染経路,感受性宿主の三つを成立要素とする。防疫はこれらの要素に対し適切な措置(消毒,検診,予防接種,早期発見・隔離,殺処分など)を講ずることが重要である。予防,治療法としては,ワクチン血清,抗菌性物質などの投与と対症療法が行なわれるが,罹患家畜の摘発淘汰が行なわれることもまれではない。また悪性の急性伝染病については,防疫を徹底して行なう必要から,家畜伝染病予防法で特に 28種の家畜法定伝染病(ほかに 71種の家畜届出伝染病がある)を定め,伝染病の予防と蔓延の防止のための規定を置いている。第2次世界大戦後,畜産の発展に伴って家畜伝染病の病禍も著しく増加した。在来の伝染病種に加え海外から新種の伝染病が流入し,大規模飼育化,家畜流通の広域化によって被害の大型化,広域化が進んで,特に悪性種の全国的な常在化を招いた。一方で伝染病の診断,予防に関する研究や防疫体制の整備も進んだ。なお防疫など家畜衛生業務一般を行なう家畜保健衛生所は,全国約 200ヵ所に設置されている。(→ウシ海綿状脳症口蹄疫炭疽鳥インフルエンザ豚コレラブルセラ症

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