生物から産生されるタンパク質などの物質を応用した薬剤。具体的には、細菌やウイルス、血液などを原料とするワクチン類、血液製剤などがある。また、近年、生物学的製剤は遺伝子組換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを用いた薬剤が主流となり、「バイオ医薬品」とも称され、抗体医薬や遺伝子治療薬も含まれる。
化学的に製造された一般的な医薬品とは異なり、生物学的製剤は高分子のタンパク質で構成されているため、投与方法として、内服では消化されてしまうことから、注射(点滴静注、皮下注射など)にて投与することとなっている。
生物学的製剤は、従来の化学的に製造された医薬品よりも治療効果が高い反面、生物由来の原料を用いるため、有効成分の変性や免疫抑制作用などの副作用を生じやすい。したがって意図した臨床上の有効性や安全性を確保するためには、適切な製造管理・品質管理を行うことが必要不可欠であり、さらには、世界各国の基準との整合性を図る目的で、従来から「生物学的製剤基準」が制定され、遵守が義務づけられている。この基準では、医薬品個々にその製法、性状、品質、貯法等に関する基準などが定められている。また、現在、生物学的製剤は、内科および皮膚科などの臨床各科診療領域で広く使用されているが、薬剤を安全に使用するための投与の手引きや使用ガイドラインなどが疾患関連の学会などから公表されているものも多い。
安全対策として、生物学的製剤全般を対象とした法的な規制はないものの、医薬品医療機器等法においては、2003年(平成15)から各製品を使用した際の感染症伝播(でんぱ)のリスクを基に、おもに動物に由来する原料または材料を用いた製品を「生物由来製品」、生物由来製品のなかでも、とくに感染症のリスクが高く、厳しい安全対策が必要なものを「特定生物由来製品」とした枠組みを設けて、その特性に応じた安全対策が行われている。具体例として、生物由来製品には、おもにトキソイドを含むワクチン、細胞培養・遺伝子組換え製剤などがあり、特定生物由来製品には、おもに血液凝固因子製剤などの血液製剤がある。これらの製剤においては、直接の容器包装に製造番号・記号とともに白地、黒枠、枠囲い黒字をもって「生物」または「特生物」と表記することとなっている。
[北村正樹 2023年5月18日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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