化膿性関節炎(読み)かのうせいかんせつえん(英語表記)Pyogenic Arthritis

六訂版 家庭医学大全科 「化膿性関節炎」の解説

化膿性関節炎
かのうせいかんせつえん
Suppurative arthritis
(感染症)

どんな感染症か

 細菌関節内に侵入して化膿する病気です。関節炎(関節リウマチ)や、持続する菌血症(きんけつしょう)がみられる心内膜炎(しんないまくえん)などに合併しやすく、また近年では、関節鏡検査や人工関節置換(ちかん)手術に伴う感染性関節炎によるものが増加傾向にあります。

 化膿性関節炎の原因菌としては、黄色ブドウ球菌が最も多くを占めます。しかし、術後の感染では表皮ブドウ球菌が、また、感染防御力の低下した感染しやすい人ではグラム陰性桿菌(かんきん)である緑膿菌(りょくのうきん)の感染が多くなります。

症状の現れ方

 患部関節に急激な痛み、腫脹(しゅちょう)はれ)や熱感が現れます。(しつ)関節が最も多く、続いて股関節、手関節、肩関節なども侵されます。しかし、股関節では腫脹は明らかでなく、歩行により鼠径部(そけいぶ)の痛みが増します。そのほか、悪寒(おかん)発熱なども現れます。

検査と診断

 針を刺して関節液を採取する穿刺(せんし)検査を行います。化膿性炎症では関節液は混濁し、白血球数は5万/μℓ以上になり、急性期においては好中球(こうちゅうきゅう)が90%以上を占めます。関節液のブドウ糖値は減少します。細菌検査では、関節液の塗抹検査や培養検査を行い原因菌を明らかにします。

 区別すべき病気には、リウマチ熱、リウマチ関節、痛風(つうふう)や外傷性炎症などがあります。

治療の方法

 早期の治療が必要です。原因菌に感受性のある抗菌薬を選択し、すみやかに点滴静脈注射を行います。

 化膿性関節炎が考えられ、原因菌が検出できない場合には、ブドウ球菌や緑膿菌に対しても効果のある殺菌性薬剤を使用します。また、関節液の貯留が著しい場合には局所穿刺(せんし)を行い、炎症性滲出液(しんしゅつえき)を吸引します。

古田 格

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「化膿性関節炎」の解説

かのうせいかんせつえん【化膿性関節炎 Pyogenic Arthritis】

[どんな病気か]
 一般的な細菌の感染によって、関節の中が化膿する病気です。
 関節まで達する深い傷を負ったために細菌が関節に入り込んだり、敗血症(はいけつしょう)、扁桃炎(へんとうえん)、膀胱炎(ぼうこうえん)など、ほかのところの感染巣から細菌が血管に入り、それが関節に流れ込んで、感染をおこしたりします。
 また、化膿性骨髄炎(かのうせいこつずいえん)(「化膿性骨髄炎」)が関節に広がって、化膿性関節炎がおこることもあります。
 まれですが、関節にたまった水を抜くとか、関節に薬を注射するなどの医療行為が原因となって感染することもあります。
[症状]
 関節に急激な痛みと腫(は)れがおこり、熱や赤みもみられます。発熱することも多く、寒けや震えをともなうこともあります。
 化膿した関節は、動かすと痛みが強くなるので、ほとんど動かすことができません。
[検査と診断]
 たまった関節液を抜き、化膿菌を検出します。また、関節液に含まれる細胞成分やたんぱく質、糖分なども調べます。
 化膿をおこしている菌が見つかれば診断がつきますが、菌が証明できないことも多く、その場合は、X線検査、MRI検査などが診断の手助けとなります。
[治療]
 まず入院して、関節をギプスで固定し、冷やします。さらに、化膿菌がわかれば、それに効く抗生物質を、点滴で使用します。
 化膿がおこって間もないときは、関節鏡で関節内を見ながら、できるだけ炎症性の肉芽(にくげ)を取り除き、チューブを挿入して抗生物質を含む洗浄液で、2週間ほど洗浄を続けます。
 病状が進行している場合は、関節を大きく切り開いて、炎症性肉芽を切除し、さらにチューブを挿入しての洗浄を行ないます。
 その後は、血液検査を行ないながら、炎症が治まるまで、抗生物質の点滴や内服を続けます。
 炎症とギプス固定による安静のために、関節の動きが悪くなるので、炎症の状態をみながら、できるだけ早く、関節を動かす訓練を始めます。
 関節の軟骨が破壊されて、骨まで炎症が広がってしまっているときは、最悪の場合、関節を固める手術(関節固定術(「関節手術のいろいろ」))が必要となります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の化膿性関節炎の言及

【関節炎】より


[感染による関節炎]
 関節炎は感染によるものが最も多い。化膿性関節炎septic arthritisは,いわゆる黄色ブドウ球菌,連鎖球菌のような一般化膿菌が起炎菌となるもので,まれに淋菌,チフス菌,インフルエンザ菌,肺炎菌などによっておこるものもある。関節液の性状により,漿液性関節炎,漿液繊維素性関節炎,膿性関節炎などに分けられる。…

※「化膿性関節炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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