日本大百科全書(ニッポニカ) 「半面的強行規定」の意味・わかりやすい解説
半面的強行規定
はんめんてききょうこうきてい
強行規定には、当事者の意思や利益・不利益いかんに関係なく適用される絶対的強行規定と、当事者の一方の不利益において変更することができない相対的・半面的強行規定がある。ここでは、保険法における半面的強行規定について解説する。保険法は取引法・債権法に属し、保険法においては契約内容の決定の自由が認められる。しかし、家計保険における保険契約者(被保険者)は保険者と比較して経済力および保険に関する知識力などにおいて劣っていることから、これを法律によって保護することが必要となる。そこで保険法では、保険契約者(被保険者)の保護のために必要と思われる規定を定めるとともに、この規定を保険契約者(被保険者)に不利益になるような特約をしても無効であるとしている。このような規定を半面的強行規定といい、ヨーロッパの諸国においてはすでに1900年代の初めに立法化されていたが、日本でも2008年(平成20)6月6日に公布された新しい保険法において初めて実現した。もっとも、半面的強行規定は、保険契約者(被保険者)を保護するために適切であるが、他方では保険制度の発展を妨げるという側面を有している。そこで、両者の要請を調和させるためにどのような規定を半面的強行規定とするかという立法上の困難な問題が存在する。
[坂口光男]