「被保険者」という用語は、同一であってもその意義は損害保険と生命保険では異なっている(概念の相対性)。
(1)損害保険における被保険者は、保険事故が発生しないことについて経済的利益(被保険利益)を有し、したがって保険事故が発生したときに損害を被り保険者に対して保険金の支払いを請求できる者をいう。保険契約者が自分の被保険利益について保険契約を結ぶのが通常であり、これを「自己のためにする保険」といい、保険契約者が他人の被保険利益について保険契約を結ぶ(たとえば、倉庫業者が預かっている荷主の商品について保険者と保険契約を結ぶ)保険を「他人のためにする保険」という。他人のためにする保険においては、その他人は保険者に対して当然に保険金請求権を有する(保険法8条)。
(2)生命保険における被保険者は、その人の生死について保険がつけられている人をいう。保険契約者と被保険者が同一人である場合の保険を「自己の生命の保険」、別人である場合の保険を「他人の生命の保険」という。他人の生命の保険で、その他人の死亡を事故とする保険契約が有効であるためには、その他人の同意があることを要する(保険法38条)。その理由は、賭博(とばく)保険・保険金殺人危険の防止、人格権侵害の危険の防止にある。
[坂口光男]
損害保険にあっては,被保険利益の帰属する者で,保険事故発生の場合に一般的には保険金の給付を受ける者である。一方,生命保険においては,保険事故発生の対象となる者で,その人の生死(場合により高度障害,傷病,入院など)が保険事故とされる人をいい,損害保険契約の被保険者に該当するものは生命保険では保険金受取人という。また社会保険においては,所定の保険給付を受ける資格のある者をいう。
損害保険においては,被保険者は自然人であっても,また法人であってもかまわない(法人がその所有する建物の火災保険を契約する場合など)が,保険の目的(保険事故発生の客体,たとえば船舶保険での船体,火災保険での建物,家財等)に事故が生じた結果,損害をこうむる地位にある者でなければならない。また被保険者は必ずしも保険契約者(保険に加入する者)と同一であることを必要とせず,この2者が異なる場合を〈他人のためにする保険契約〉といい,逆に両者が同一である場合は〈自己のためにする保険契約〉という。生命保険においても同様に,被保険者と保険契約者が同一人である必要はないが,自然人に限られ,また両者が異なる場合,被保険者が同時に保険金受取人でないかぎりは,保険契約の締結に際し被保険者の同意を必要とする。
執筆者:高木 秀卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 みんなの生命保険アドバイザー保険基礎用語集について 情報
出典 自動車保険・医療保険のソニー損保損害保険用語集について 情報
…これを生命保険に即してみると,死亡,老齢化,疾病,傷害,廃疾などという生命と身体をめぐって生ずる事故に備え,経済的に事前に配慮しておく制度であるということができる。自己の生命または身体に保険がつけられている者を被保険者という。この被保険者に〈万一のこと〉があったときに,保険金が支払われる。…
… (4)賭博,富くじ 多数者の拠出金が偶然に特定の者に帰属する点は保険と似ているが,不労の利得を目的とするもので射倖心をあおり正常な勤労意欲を阻害し公序良俗に反するとして,基本的に違法とされる。保険はあくまでも事故の発生による損害・損失を補償することが目的であるし,弊害防止措置(物・財産保険における利得禁止の原則や,他人の生命に掛ける人保険では被保険者同意が必要なこと等)も設けられている。 (5)共済共済は,人々の生活を脅かすさまざまなリスク(死亡,住宅災害,交通事故など)に対し,組合員相互に助け合うという活動を,保険の仕組みを使って行う保障事業である。…
※「被保険者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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