日本大百科全書(ニッポニカ) 「南柯太守伝」の意味・わかりやすい解説
南柯太守伝
なんかたいしゅでん
中国、唐代の伝奇小説。李公佐(りこうさ)作。淳于棼(じゅんうふん)という主人公が酒に酔ってうたた寝するうち、槐安(かいあん)国という国の使者に招かれ、庭の槐(えんじゅ)の木の洞(ほら)を通ってその国に行き、栄達を極める夢をみる。夢から覚めて、庭の槐の洞を切り開いて調べてみると、夢でみたとおりの蟻(あり)の国が現れたという話。作者李公佐の伝記は伝わらないが、小説の後書きによると、徳宗(とくそう)の貞元(ていげん)(785~804)ごろから宣宗(せんそう)の大中(だいちゅう)年間(847~859)にかけて生きた人だったらしい。後世の戯曲『南柯記』はこれに基づいている。なお曲亭馬琴(きょくていばきん)の読本(よみほん)『三七全伝南柯夢(さんしちぜんでんなんかのゆめ)』はこの作からも材を得ている。
[高橋 稔]
『高橋稔・西岡晴彦訳『中国の古典32 六朝・唐小説集』(1982・学習研究社)』