三七全伝南柯夢(読み)サンシチゼンデンナンカノユメ

デジタル大辞泉 「三七全伝南柯夢」の意味・読み・例文・類語

さんしちぜんでんなんかのゆめ【三七全伝南柯夢】

読本。6巻。曲亭馬琴作、葛飾北斎画。文化5年(1808)刊。三勝さんかつ・半七の情話もとに唐の小説南柯記」などを取り入れ、室町時代末の武士世界に移して勧善懲悪を盛り込んだ伝奇小説

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精選版 日本国語大辞典 「三七全伝南柯夢」の意味・読み・例文・類語

さんしちぜんでんなんかのゆめ【三七全伝南柯夢】

  1. 読本。六巻。滝沢馬琴作。葛飾北斎画。外題「南柯夢笠屋三勝赤根半七節操全伝」。文化五年(一八〇八)刊。「艷容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」などで知られる三勝半七の心中事件に題材を取り、中国白話小説「二度梅全伝」の構成を借りて、唐代小説「南柯記」、中国戯曲琵琶記」などを取り入れつつ趣向をかまえ、それを室町末期の武士の世界に移して、勧善懲悪を旨とする馬琴流の伝奇的小説に仕立てた作品。「椿説弓張月」「八犬伝」と並ぶ馬琴読本の代表作。

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改訂新版 世界大百科事典 「三七全伝南柯夢」の意味・わかりやすい解説

三七全伝南柯夢 (さんしちぜんでんなんかのゆめ)

読本。曲亭馬琴作,葛飾北斎画。1808年(文化5)刊。父半六の出世欲のために幼い日からの婚約者おさんとの仲をさかれ,家老蟻松家の娘園花を妻とした青年武士赤根半七が,義と節操と孝に生き,園花とはついに肌を合わさず,後に笠屋三勝(さんかつ)と名のって舞姫となっていたおさんと結ばれるという物語。2人は親への孝をはたせず,自決を決意して千日寺に赴くが,そこにはすべての因果のもつれを懺悔した半七の父半六と,おさんの実母で蟻松家夫人の敷波が自裁していた。歌舞伎浄瑠璃で有名な三勝半七の情話を素材に,明代の戯曲《南柯夢》などを付会して,男女の仲,親子の間にも正義と節操が必要であることを高らかにうたいあげた,馬琴の読本の中の佳作の一つ。女に要求される貞操は,男子にもおのずから要求される義であるとする思想がアピールして,好評を得ていた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三七全伝南柯夢」の意味・わかりやすい解説

三七全伝南柯夢
さんしちぜんでんなんかのゆめ

江戸時代後期の読本滝沢馬琴作。葛飾北斎画。6巻7冊。文化5 (1808) 年刊。早くから祭文や歌舞伎に取上げられて有名な美濃屋三勝と赤根屋半七の情死事件を素材に,唐の『南柯記』の趣向などを取入れた小説。時代は永正年間 (1504~21) ,舞台は奈良の領主続井順昭の家中に設定されている。馬琴は,読本創作上の思想として堅持していた勧善懲悪の意を寓するため,三勝半七の情死という実説を改変し,三勝の生母敷浪と半七の父半六が悔恨の自殺をとげる結末とした。

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