原子単位(読み)ゲンシタンイ

化学辞典 第2版 「原子単位」の解説

原子単位
ゲンシタンイ
atomic units

電子の静止質量 me電気素量eおよびプランク定数hを2πで割ったℏ(作用単位)をそれぞれ1とおいて成立する単位系a.u.略記する.長さの単位はボーア半径

(1 a.u. = a02/mee 2),
時間の単位は

1 a.u. = a0ℏ/e 2
で,もっとも内側のボーア軌道を電子が一周するのに要する時間が2πになる.そのときの電子の速度が速度の単位で,真空中の光速度が137.036 a.u. になる.エネルギーの単位は

1 a.u. = e 2/a0
で,水素原子イオン化エネルギー

1/2 a.u. = 13.6 eV
になる.当然,この単位系は国際単位系(SI単位)ではないが,量子力学の式を取り扱うときには,meeやℏを書く必要がないので便利である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子単位」の意味・わかりやすい解説

原子単位
げんしたんい

とくに原子を扱うときに用いる単位系。原子を取り扱う場合には電気素量や電子の質量、プランク定数などの微小な量ばかりが基本的な役割を演ずる。したがって普通の単位系では、すべての量が非常に小さくなり、しかも端数が多くなって不便である。そこで1927年イギリスの物理学者ハートリーによって、次のような単位を用いると原子的な現象を扱うのに便利なことが示された。

 長さの単位に水素原子のボーア軌道半径a=0.529167×10-8cm
 電荷の単位に電気素量(電子のもつ電荷の絶対値)e=4.80298×10-10e.s.u.
 質量の単位に電子の静止質量m=9.1091×10-28g
 これらを原子単位とよぶが、どの量をどう基準にとるかによって、いろいろな原子単位ができる。単に原子単位というだけでは、一つの量に対して一つの単位は決まらない。ハートリーの提案した以外にもいろいろな原子単位が考えられる。

[小泉袈裟勝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の原子単位の言及

【ボーア半径】より

…原子,分子の理論では,ボーア半径を長さの単位として用いると便利なことが多い。この単位を原子単位と呼び,a.u.(atomic unitの略)で表す。原子単位ではa=1a.u.である。…

※「原子単位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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