1913年に提出されたN.H.D.ボーアの水素原子理論によると,水素原子の基底状態(もっともエネルギーの低い状態)においては,電子が原子核(陽子)のまわりに半径a=ℏ2/me2の円運動をしている。ただし,mは電子の質量,eは電子の電荷の絶対値,ℏ=h/2π(hはプランク定数)である。この半径aをボーア半径といい,a=5.29177×10⁻11mである。ボーアの理論は前期量子論の糸口となり,続いて量子力学が現れた。量子力学によれば,電子は雲のように広がっていて,電子雲の状態は波動関数で表される。水素原子の基底状態は1s状態と呼ばれ,その波動関数は,と表される。ただし,x,y,zは陽子の位置を原点とする直交座標,rは原点からの距離である。この波動関数は陽子を中心として,半径約aの範囲に広がっており,その意味で,ボーア半径は今日でも物理的意味をもっている。原子,分子の理論では,ボーア半径を長さの単位として用いると便利なことが多い。この単位を原子単位と呼び,a.u.(atomic unitの略)で表す。原子単位ではa=1a.u.である。
→原子
執筆者:伊藤 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水素原子の基底状態における広がりの程度(通常、水素原子内電子の第一軌道半径)のこと。長さの単位として用いられ、記号はa0である。プランク定数hを2πで割ったものをħ、eを単位電荷、mを電子の質量としたときħ2/me2の長さをいい、a0=5.29177249×10-11mの大きさをもつ。
古典力学を用いて水素原子の広がりを導き出すことができるとすれば、この広がりを表す長さの次元を有する量が、質量および電荷の組合せによって表すことができるはずであるが、それは不可能である。デンマークの理論物理学者N・ボーアは、古典力学に基づいた電子の軌道に、プランク定数を用いた軌道選択の条件すなわち量子条件を付加して、水素原子の広がりを表すボーア半径を導いた。実際の場合にはmのかわりに陽子の質量Mとmとで表される換算質量μ(ミュー)を用いる。また水素原子の高いエネルギー状態(励起状態)はボーア半径の整数倍の広がりをもつ。
[田中 一]
ボーアの原子理論における水素原子の第一電子軌道(主量子数n = 1)の半径をさし,
a0 = h2/(4π 2me2) = 0.05292 nm
(ここで,hはプランク定数,mとeは電子の質量と電荷(esu))で与えられる.量子力学的には,水素原子の基底状態における核と電子間の距離の最大確率値が a0 となる.原子,分子の理論的取り扱いにおいて,長さの原子単位として一般に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ただし,は原点(陽子の位置)からの距離を表す。aはボーアの原子模型におけるn=1の円軌道の半径,すなわち,a=ħ2/me2であり,ボーア半径と呼ばれる。その値はa=0.53×10-10mである。…
※「ボーア半径」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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