日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボーア半径」の意味・わかりやすい解説
ボーア半径
ぼーあはんけい
Bohr radius
水素原子の基底状態における広がりの程度(通常、水素原子内電子の第一軌道半径)のこと。長さの単位として用いられ、記号はa0である。プランク定数hを2πで割ったものをħ、eを単位電荷、mを電子の質量としたときħ2/me2の長さをいい、a0=5.29177249×10-11mの大きさをもつ。
古典力学を用いて水素原子の広がりを導き出すことができるとすれば、この広がりを表す長さの次元を有する量が、質量および電荷の組合せによって表すことができるはずであるが、それは不可能である。デンマークの理論物理学者N・ボーアは、古典力学に基づいた電子の軌道に、プランク定数を用いた軌道選択の条件すなわち量子条件を付加して、水素原子の広がりを表すボーア半径を導いた。実際の場合にはmのかわりに陽子の質量Mとmとで表される換算質量μ(ミュー)を用いる。また水素原子の高いエネルギー状態(励起状態)はボーア半径の整数倍の広がりをもつ。
[田中 一]