原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)。原爆被爆者の保健、医療および福祉にわたる総合的な援護対策を定める法律で、1995年(平成7)7月施行。被爆者対策は、これまで1957年(昭和32)に被爆者医療法、1968年に被爆者特別措置法が制定され、この2法を中心に医療の給付、手当等の支給など各種の援護施策が進められていたが、高齢化の進行等により被爆者を取り巻く環境が変化していることから、総合的な被爆者援護対策を講ずることとしたもの。これまでは、社会党(現社会民主党)が被爆者に対する国家補償の精神に基づく援護対策の制定を強く求めていたが、村山富市(とみいち)政権(1994~96)のもとで、前文に援護対策を「国の責任において」と明記することで与党内がまとまった。被爆者で、これまで葬祭料が支給されなかった死没者の遺族に、特別葬祭給付金として1人当り10万円の記名国債が交付される。死没者の尊い犠牲を銘記し、かつ恒久の平和を祈念するための事業の実施についても定めている。一部の手当に設けられていた所得制限も撤廃された。
この法律に基づく医療の給付、特別手当等の措置を受けるためには、原爆症の認定を受けなければならない。国の原爆症認定基準をめぐっては、厳しすぎるとする訴訟が提起され、最高裁判所や高等裁判所で国側に厳しい判断が示されたことから認定基準を緩和する見直しが行われた。
[浅野一郎・浅野善治]
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