原子爆弾による被災によって生じた健康障害の総称で、原子爆弾症の略称。現実には広島および長崎の被災者以外にはみられないものである。爆風や熱による外傷、および放射線による障害があり、これらが複合したものが多い。これらのうち原爆症に特有な症状は放射線被曝(ひばく)を伴ったものである。すなわち、もっとも代表的な症状は急性の放射線障害であるが、現在なお問題になっているのは晩発性の障害である。これには癌(がん)、白血病、白内障、瘢痕(はんこん)性萎縮(いしゅく)による機能障害などがある。制度上は、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(原爆被爆者援護法)に基づき、厚生労働大臣の認定が必要とされる。
なお、原爆の放射線による障害を長期間にわたって調査研究してきた原爆傷害調査委員会(ABCC=Atomic Bomb Casualty Commission)は、アメリカ科学アカデミー(NAS=National Academy of Sciences)によって1946年末に広島市と長崎市で同時に創設され、翌年から調査を開始したが、1960年から日本側も加わり、1975年(昭和50)4月から日米対等で管理、運営する財団法人放射線影響研究所に改組された。
[重田定義]
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…一般に広島,長崎に投下された原子爆弾に起因すると考えられる疾病のことで,原爆症と略称することが多い。原爆被災者の実数を正確にとらえることは,第2次大戦終戦直前の混乱期であったことから難しいが,広島の原爆投下時(1945年8月6日)に市内にいた約42万人の市民のうち約15万9000人(約38%)が,4ヵ月後の1945年12月末までに死亡した。…
※「原爆症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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