友釣(読み)トモヅリ

デジタル大辞泉 「友釣」の意味・読み・例文・類語

とも‐づり【友釣(り)】

アユの釣り方の一。掛け針をつけたおとりのアユを泳がせ、そこを縄張りにもつアユが挑んでくるのを針にかけて捕らえる方法

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精選版 日本国語大辞典 「友釣」の意味・読み・例文・類語

とも‐づり【友釣】

  1. 〘 名詞 〙 鮎の釣り方の一つ。生きた囮(おとり)鮎の下に掛け針をつけて泳がせ、縄張り意識の強い鮎の習性を利用し、鮎をさそい寄せ、引っ掛けて釣る日本独特の釣り方。
    1. [初出の実例]「友釣(トモヅリ)とて活きたる鮎を綸に繋ぎ」(出典:東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下)

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改訂新版 世界大百科事典 「友釣」の意味・わかりやすい解説

友釣 (ともづり)

アユを釣る方法の一つ。アユは石に付着したケイ藻類を餌とし,そこになわばりをつくるので,ほかのアユが近づくと,これを排斥しようとする。このなわばり意識と闘争心の習性を利用したのが友釣である。まずおとりのアユを用意し,このアユの鼻孔に丸い形をした〈鼻環(はなかん)〉を通す,この環から糸をだしてアユの尻びれに針を打ち,さらにその後方に1本か2本,または3本いかりの掛け針をつける。掛け針の位置は尾ひれから1cm以内にあるのが標準である。この仕掛けをしたおとりアユを6~8m級のさおで川に送りだし,野生のアユがなわばりを守っているところへと巧みに誘導して泳がせ,相手の闘争心をかきたてる。このおとりを見たアユは,後方から腹のあたりをねらって体当りして反転するのが多く,その瞬間に尾ひれのうしろにある掛け針にかかったところをゆっくり釣り上げる。おとりは弱ってくるので,釣り上げたアユを次のおとりに使う。日本独特の釣り方だが,その起源は不明である。アユ釣は《古事記》にも記述され,毛針釣や網漁の歴史は古いが,友釣は江戸中期以後といわれる。友釣は武士にのみ許されたという説もある。なお1974年,アユ友釣で知られる狩野川流域の静岡県田方郡大仁町(現,伊豆の国市)で,天保年間(1830-1844)に,アユはやな漁で採捕し年貢を代官所におさめていたが,新規釣魚〈友釣〉で収獲が減り,近在の各村代表が韮山代官所に連判で友釣禁止を訴えたという古文書が発見されている。
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世界大百科事典(旧版)内の友釣の言及

【アユ(鮎)】より

…まだ動物食のころは,昆虫に似せた毛針を水中に沈め川底を流して釣る沈み釣り(どぶ釣り)があり,毛針の種類とその精巧さには目を見張るものがある。アユのなわばり行動を利用して,おとりアユをなわばり域に近づけ,それに攻撃してくるアユをおとりアユのまわりに配した針で引っ掛けて釣る〈友釣り〉は,手ぎわよさといかにアユの好むポイントを見つけるかが肝心である。そのほかに,かなりの熟練を要するものに浅瀬をひき回してアユを引っ掛ける〈ころがし〉,深いところから上へしゃくり上げて引っ掛ける〈しゃくり〉などがある。…

※「友釣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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