双鉤填墨(読み)そうこうてんぼく

精選版 日本国語大辞典 「双鉤填墨」の意味・読み・例文・類語

そうこう‐てんぼく サウコウ‥【双鉤填墨】

〘名〙 籠写(かごうつし)した文字の、輪郭の中を墨でうずめて同じような書蹟をつくる方法中国の唐時代に発達

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「双鉤填墨」の意味・わかりやすい解説

双鉤填墨
そうこうてんぼく

原本の上に紙をのせ、透写(すきうつ)しによって筆跡を写す模写方法で、中国・唐代(7~10世紀)に発達した。文字の大きさ、形、運筆の速度、緩急筆圧、そして墨色などを原本どおりに丹念に書き写すため、肉筆(にくひつ)と区別がつかないほど精妙なものもある。「双鉤」は文字の輪郭を細い墨の線で写し取ることで、わが国ではこれを籠字(かごじ)という。「填墨」は籠字の中を墨で塗りつぶすこと。わが国伝存の遺品としては、奈良時代に将来された中国・東晋(とうしん)の王羲之(おうぎし)の筆跡の模写『喪乱帖(そうらんじょう)』(宮内庁)、『孔侍中帖(こうじちゅうじょう)』(東京、前田育徳会)がよく知られる。

[名児耶明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「双鉤填墨」の意味・わかりやすい解説

双鉤填墨
そうこうてんぼく
Shuang-gou-tian-mo

中国で文字を写し取る方法の一つ。写そうとする文字の上に薄い紙を載せて謄写するもので,最初に輪郭だけを線で写し (双鉤) ,中に墨を補填 (填墨) する方法をいう。六朝時代に行われていたが,唐代になって法書の鑑賞の発達に伴って,王羲之などの法書の搨模 (とうも) に用いられた。代表的な例として『喪乱帖』『孔侍中帖』 (ともに王義之の書の搨摸) などがある。

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