中国、晋(しん)時代の王羲之(おうぎし)の筆跡の一つ。東京・前田育徳会蔵。国宝。羲之の手紙である哀禍(あいか)帖・孔侍中帖(九月十七日帖とも)・憂懸(ゆうけん)帖、あわせて9行の総称。羲之の真跡本ではなく、原本を敷き写しにして籠字(かごじ)をとり、その中を墨で填(う)めた、いわゆる双鉤填墨本(そうこうてんぼくぼん)である。料紙は、縦に簾(すだれ)のような細かい篦(へら)目の入った白麻紙(しろまし)で、唐時代のもの。「延暦勅定(えんりゃくちょくじょう)」の朱文の印が捺(お)される。『東大寺献物帳』に記された「大小王真跡書一巻」または「書法廿巻」に含まれるものであろう。当時の遣唐使による舶載品(鑑真(がんじん)和上の将来品の説もある)。『喪乱帖(そうらんじょう)』(宮内庁蔵)と並んで、王羲之書法を伝える貴重な遺品である。
[神崎充晴]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…今日,王羲之の真跡は一つも残っていないとされている。しかし,真筆に近いものとしては,日本に伝わる《喪乱帖(そうらんじよう)》と《孔侍中帖》とがある。これらは,隋代以前の搨摹本(とうもぼん)だといわれるが,その真跡を想像するに足る。…
※「孔侍中帖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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