改訂新版 世界大百科事典 「取立訴訟」の意味・わかりやすい解説
取立訴訟 (とりたてそしょう)
債権に対する強制執行の際の,差押債権の取立ての一方法。債務名義がまだ存在しないときに,差押債権者が自己の取立権に基づいて,自己の名で第三債務者に対し給付訴訟を提起して取立てをする訴訟である(民事執行法157条)。金銭の支払を目的とする債権を差し押さえた債権者は,その債権を取り立てる権能を与えられるので,任意弁済の請求をなしうるし,第三債務者がこれに応じなくとも,差押債権につき担保権があればその実行ができ,また,差押債権に(債務者を債権者とする)債務名義がすでに存在すれば,承継執行文を得て強制執行することができる。これに対し訴訟による取立ては,直接,第三者に対し給付訴訟を提起し,債務名義を取得したうえで,その実行をする方法である。差押債権者が第三債務者に対し取立訴訟を提起したときは,受訴裁判所は,第三債務者の申立てによって,他の債権者で,同一債権を差し押さえた者に対して,原告側に共同訴訟人として参加すべきことを命じ,この裁判がなされると,取立訴訟判決の効力は,訴訟への参加を命じられた差押債権者にも及ぶ(民事執行法157条1,3項)。
なお,物の引渡執行の際に認められる取立訴訟は,物が第三者の占有中にあり,差押命令が発せられてもその第三者が引渡しを拒んでいる場合に,その第三者に対する取立訴訟の引渡判決を債務名義として,その実行をはかるものであり,債権執行の方式の応用である。
執筆者:清田 明夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報