改訂新版 世界大百科事典 「債権執行」の意味・わかりやすい解説
債権執行 (さいけんしっこう)
金銭執行のうち,債務者が第三者に対して持っている債権を強制執行の対象とするもの(民事執行法143条以下)。対象は,金銭の支払を目的とする債権が大部分を占めるが,このほか,金銭執行の前提として,有体物(動産,船舶など)の引渡請求権を強制的に実現して,その後,債務者の占有になった,その有体物に対して改めて強制執行を行うこともある(163条)。しかし,一定の有価証券(裏書の禁止されていないもの)は,動産執行の対象とされ,また,不動産に対する引渡請求権については,その占有を取得することが,換価の必要的要件ではないため債権執行は認められていない。このほか,財産的価値をもつ債権として,例えば,賃借権,仮登記上の権利,電話加入権,著作権,特許権なども,その対象となる(167条)。債権執行手続も,差押え,換価,配当と進むが,債権執行の特色として,つねに第三債務者が存在し,その者は差押えにより,債務者への弁済を禁止されるし,執行に協力する義務を負う(145条1項後段)。債務者が国および地方公共団体以外から,生計を維持するため支給を受ける継続的給付債権と,給料,賃金,俸給,退職年金および賞与ならびに,これらの性質を有する給料債権については,原則的に4分の3が差押禁止となるが,これの拡張あるいは縮減も認められる(152,153条)。
執筆者:清田 明夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報