同一質量の労働には,性,年齢,民族などの労働者の属性にかかわりなく,同一賃金率で賃金を支払う原則をいう。略して同一労働同一賃金ということが多い。資本主義は商品経済を通じて等価交換をもたらすのであるから,この原則は資本主義社会においても成立する根拠をもつ。しかし現実には,同一職種または同一熟練度をもつ労働者の間に,性,年齢,民族,身分などの差別が行われることによって,同一労働に対するさまざまの差別賃金が存在している。そのため同一労働同一賃金の原則は,歴史的には労働組合による賃金差別撤廃の要求原則としてとりあげられてきた。資本家もまたこの原則をかりて,いわゆる職務評価による差別労働差別賃金の諸制度をとり入れているが,これは労働組合の賃率要求としての同一労働同一賃金原則とは異質のものである。
同一労働同一賃金要求の歴史は古く,18世紀後半にまでさかのぼる。産業革命による機械制大工業の出現は,大量の低賃金女子・未成年労働者の職場進出をうながし,賃金切下げの脅威者として現れた。当初男子労働組合は,みずからの自衛策として女性を産業から締め出すことを試みたが,ほとんど失敗に終わり,はじめて女性や児童の労働条件規制が自分たちの労働条件改善につながることを自覚するにいたり,男子労働者も女子労働者(〈女子労働〉の項参照)とともにこの要求のために闘いはじめた。とくにイギリスでは,第1次大戦中労働組合は政府との戦時協定のさい,女子労働者の熟練労働分野への進出による熟練労働者の賃金率低下を防ぐため,男女同一労働同一賃金の協定を結んだ。この原則は,その後ILOが1919年国際労働憲章にもりこんで以来,各国に波及することとなった。日本では労働基準法4条で男女の差別賃金を禁止している。なおILOは51年の第34回総会で〈同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬に関する条約(100号条約)〉を採択し,日本も67年にこれを批准したが,現状はなおこの原則からほど遠い。
→賃金構造
執筆者:竹中 恵美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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