呉満有運動(読み)ごまんゆううんどう

改訂新版 世界大百科事典 「呉満有運動」の意味・わかりやすい解説

呉満有運動 (ごまんゆううんどう)

中国,抗日戦争期,解放区で行われた生産運動。中国共産党は,1940年代延安解放区を維持するために,八路軍からは王震が指導した延安の南にある南泥湾開墾区を,農民からは富農呉満有をモデルに選び生産運動を展開した。富農が選ばれたのは当時の広範な統一戦線によるからである。50年前後の土地改革,50年代中期の合作社化運動,60年代の自力更生期には,それぞれの時代の任務を担ったモデルが選ばれた。呉満有は中国の解放時に台湾に渡った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「呉満有運動」の意味・わかりやすい解説

呉満有運動
ごまんゆううんどう

中国、抗日戦争の時期に解放区で展開された生産増強運動。中国共産党は1937~45年、解放区での生産増強を目ざし、ソ連スタハノフ運動に倣って労働英雄制度をつくり、毎年労働英雄を表彰したが、43年延安で開かれた第1回労働英雄大会において農業労働模範の筆頭に選ばれたのが貧農の呉満有であった。彼は陝甘寧(せんかんねい)辺区荒れ地を開墾し、労働を重んじ、合理的な経営で貧農から新式富農への可能性を示した。当時中国共産党は統一戦線の要請から、一時土地改革を停止して農業生産の発展に全力を注いでいた。こうしたなかで43年には『呉満有』という詩も生まれた。その後、呉満有は国民党軍に逮捕されたといわれるが、消息はさだかでない。

[山下龍三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「呉満有運動」の意味・わかりやすい解説

呉満有運動
ごまんゆううんどう
Wu Man-you yun-dong

中国共産党が抗日戦争時期に国内で行なった生産増強運動。 1943年から,ソ連のスタハノフ運動にならい労働英雄制度を設け,毎年「労働英雄」を表彰することになったその第1回労働英雄大会において農業英雄の筆頭として選ばれたのが,呉満有であった。呉満有は難民として逃れた陝甘寧地区で,個人の勤労によって全体の利益をはかる新式富農となった。以後,全国的に「呉満有に学べ」という運動が展開された。経済復興期 (1949~52) に一時的に生産を高めるため,このような富農経済が農業生産発展に大いに活用された。

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百科事典マイペディア 「呉満有運動」の意味・わかりやすい解説

呉満有運動【ごまんゆううんどう】

中国で抗日戦争期にソ連のスタハーノフ運動にならって起こった生産増進運動。1943年延安で共産党が開いた第1回労働英雄大会農業部門で特等英雄になった呉満有に続けというもの。呉満有は貧農出身だが当時は新式富農で,合理的農業により生産を高めたとして,統一戦線政策の象徴とされた。

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