改訂新版 世界大百科事典 「周産期死亡」の意味・わかりやすい解説
周産期死亡 (しゅうさんきしぼう)
perinatal death
妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡をあわせたものを周産期死亡といい,出産数(出生数+妊娠満22週以後の死産数)1000対の周産期死亡率perinatal mortalityで観察する。
周産期死亡として観察することは,1950年以降WHOによって提唱されてきたものである。妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡とはともに母体の健康状態に強く作用されるという共通点があること,各国での死産の定義が統一されておらず,出生直後の死亡も死産として届け出られることなどから,周産期死亡を出生をめぐる死亡として観察し,母子保健上の指標とするために提唱されたものである。従来は妊娠満28週以後の死産(後期死産)と早期新生児死亡をあわせたものが周産期死亡と定義されていたが,1995年より国際疾病分類第10回修正(ICD-10)が適用されたことに伴い上記のように改正された。日本の周産期死亡率は,1950年の46.6から60年41.4に,70年21.7に,80年11.7と減少し,1995年には5.0と大幅に改善され,年々減少する傾向にある。これを諸外国と比較すると,わが国は最低率となっているが,相対的に後期死産の割合が高いことが特徴である。都道府県別には明らかな傾向はみられない。
周産期死亡の原因としては,児側病態でみると,〈周産期に発生した病態〉82.9%,〈先天奇形,変形及び染色体異常〉15.4%となっている。また母側病態からみると〈現在の妊娠とは無関係の場合もありうる母体の病態〉28.1%,〈胎盤,臍帯及び卵膜の合併症〉が26.6%,〈母体の妊娠合併症〉が15.7%となっている。
今後,1995年以前と以降の周産期死亡率を経年比較したり国際比較する場合には定義が変わっていることに注意する必要がある。
→母子保健
執筆者:飯島 純夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報