死産(読み)シザン(その他表記)stillbirth

翻訳|stillbirth

デジタル大辞泉 「死産」の意味・読み・例文・類語

し‐ざん【死産】

[名](スル)《「しさん」とも》胎児が死んだ状態で生まれること。

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精選版 日本国語大辞典 「死産」の意味・読み・例文・類語

し‐ざん【死産】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しさん」とも ) 妊娠中生きていた胎児が死体となって分娩(ぶんべん)されること。胎盤あるいは胎盤血行の障害が原因となる。
    1. [初出の実例]「死産に関し埋火葬認許証を与ふるときは」(出典:内務省訓令第二一号‐明治三三年(1900)六月二七日)

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改訂新版 世界大百科事典 「死産」の意味・わかりやすい解説

死産 (しざん)
stillbirth

妊娠時期にかかわりなく,胎児が母体から完全に排出または娩出される以前に死亡している分娩をいう。したがって,出生時瞬時でも呼吸,心拍動臍帯さいたい)拍動,随意筋の運動など生きている徴候がみられた場合には,たとえ生存不可能な程度の未熟児奇形児であっても生産児であって,死産児ではない。死産には自然死産人工死産がある。合法的な人工死産とは,医師によって行われるもので,胎児の母体内生存が確実なときに,母体保護法に基づくか,母体保護法の適応外でもっぱら母体の健康保持を目的として,胎児またはその付属物(病的付属物を含む)に加えられた措置ならびに陣痛促進剤の使用による死産であり,その他の人工死産はすべて非合法的なもので堕胎罪となる。人工死産以外の死産は自然死産であるが,母体の疾病治療のための手術や投薬,胎児を出生させることを目的として加えられた人工的処置,胎児の不明なときや死亡しているときに加えられた人工的処置による死産も自然死産とされている。一般に自然死産は妊娠時に胎児が死亡した子宮内胎児死亡と分娩が開始してから娩出するまでの産道内死亡とに分けることができる。子宮内胎児死亡の原因は妊娠中毒症,糖尿病等の母体の異常,常位胎盤早期剝離(はくり)等胎盤または臍帯の異常,胎児奇形,血液型不適合(とくにRh不適合)妊娠等があげられ,分娩時の産道内死亡も,難産をはじめとする多くの原因によって起こる。自然死産は母体の管理により防ぐことができるものが多いので,妊娠中の的確な管理により死産の減少が期待できる。

 医師による人工死産には母体保護法に基づくものと基づかないものがある。前者は,胎児が母体外において生命を保持しつづけることができない時期に,医師会の指定する医師によって,(1)妊娠の持続または分娩が身体的・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるとき,(2)暴行や抗拒不能状態で姦淫されて妊娠したときに行われる人工妊娠中絶である(母体保護法14条)。後者は,これら以外の理由で母体を疾病から救うために行われる人工妊娠中絶である。

 人工妊娠中絶を行った医師は,その月中の手術結果をまとめて翌月10日までに理由を記して都道府県知事に,妊娠満12週(第4月)以後の死産児を検案して異状があると認めた医師および助産婦は,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。また,妊娠満12週以後に死児を出産したときは,届出義務者は医師または助産婦の死産証書を添えて,死産後7日以内に届出人の居住地または死産したところの市区町村長に届け出なければならない。

妊娠満12週以後の死産において医師または助産婦が発行する書類で,死産届の添付書類として必要なものであるが,医師や助産婦の立会いなしに死産した場合は,この書類がなくても死産届は可能である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「死産」の意味・わかりやすい解説

死産
しざん
stillbirth

出産時、すでに胎児が死亡している場合の分娩(ぶんべん)をさす。したがって妊娠初期の流産も含まれることになるが、統計上の死産数は「死産の届出に関する規程」すなわち法律としての効力をもつ昭和21年厚生省令第42号によって届出を必要とする妊娠4か月(12週)以後の死産だけを含んでいる。

 死産には、自然分娩で胎児が死亡していた自然死産と、人工的に分娩させたときに胎児が死亡していた人工死産がある。死産統計には、母体保護法による妊娠4か月から6か月までの人工妊娠中絶が、人工死産に含まれている。死産のおもな原因としては、胎児の疾病異常、胎盤や臍帯(さいたい)の異常、難産、妊娠中毒症などがあげられる。なお、妊婦の死亡後に死んだ胎児が娩出される現象は屍産(しさん)とよばれる。

 死産の届出は、医師または助産師の死産証書または死胎検案書を添え、死産後7日以内に届出人の所在地または死産のあった場所の市町村長(政令指定都市では区長)に提出する。

[新井正夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「死産」の意味・わかりやすい解説

死産
しざん
stillbirth

胎児が生命を失った状態で母体から娩出されること。日本では,妊娠4ヵ月以後の死産は医師,助産師による死産証明書発行の対象となり,また人口動態統計にも反映されている。妊婦の病気や異常分娩によって起こるが,原因不明のこともある。産婦の死亡後,数時間または数日後に死胎が娩出される屍体分娩のことを死産という場合もある。なお,死産の定義は国によって異なるので,世界保健機関 WHOは 1950年,周産期死亡の統計をとることを提唱した。

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栄養・生化学辞典 「死産」の解説

死産

 妊娠12週以後に死児を出産すること.

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世界大百科事典(旧版)内の死産の言及

【嬰児殺し】より

…出生の前であったか後であったかにより,堕胎罪との限界が法律上および事実上問題となる。【西田 典之】
[法医学的調査]
 嬰児の解剖をはじめ,法医学的調査に求められるのは,発育程度,生死産の別,生産児なら生まれてからの生存期間等の判断である。(1)発育程度 発育の程度は出産の難易度,生活能力の有無などの判断資料となり,身長,体重のほか新生児では頭の大きさ,胸囲,肩幅,毛髪やつめの長さ,毳毛(ぜいもう)(生毛)の発生状態,胎垢の付着状態,外陰部の状態,大腿骨下端や踵骨の化骨核の大きさ,頭蓋骨の大きさ,臍帯の長さ,胎盤重量などによって推定される。…

【出産】より

…また出産は娩出された児を中心に結果として見る場合であり,分娩は母体を中心にしかもその経過を含めていう場合に用いられるということもできよう。出産は生産と死産とを総称したものである。なお出産中の妊婦を産婦という。…

【出生】より

…〈しゅっしょう〉ともいう。胎児が死んで母体から分離する死産と区別される。また出生が人類社会の構成主体となることを意味する以上,母が子を生む行為としての出産とも区別すべきであろう。…

※「死産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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