周産期(読み)しゅうさんき

  • perinatal period
  • しゅうさんき〔シウサン〕

妊娠・子育て用語辞典の解説

広義では、妊娠してから生後4週間の時期を指します。狭義では、妊娠22週から、生後7日未満までの時期を指す言葉です。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(愛育病院院長)、子育て編:多田裕(東邦大学医学部名誉教授) 妊娠・子育て用語辞典について 情報

百科事典マイペディアの解説

妊娠28週から出産後7日までの期間をいう。この時期は,胎児新生児母体障害が起こりやすい。そこで,従来産科領域だったこの時期に,胎児や新生児に障害が起こったときに迅速に対応できるよう,産科と小児科が協力して,母児ともに総合的に管理し,分娩を迎えようという考えかたから,周産期医学が成立した。周産期医学は妊娠28週以前の早期産も対象とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

母親からみれば分娩(ぶんべん)、新生児からみれば出生の周辺期を意味し、医学的にも医療上でも、母体および胎児・新生児の二つの生命を対象として、分娩と出生という人生においてもっとも劇的でありかつ危険に満ちた時期である。通常は、統計用語の周産期死亡(妊娠後期の死産と早期新生児死亡を加えたもの)から転用した医学用語として用いられ、新生児の適応生理をはじめ、きわめて特異的な病態生理が介在するときを意味する。近年は、出生前後のときに限らず、母体、胎児から新生児、さらにはその予後までを含む幅広い領域を担当する診療科が、周産期センターという名称で設置されている。
 周産期医療は母体・胎児の管理を行う産科と、新生児管理を行う小児科の協力によって行われる。新生児医療の進歩に伴い、新生児死亡の大半が先天性疾患および仮死であり、胎児の疾患および状態を羊水分析や超音波などを用いて行う出生前医学が、従来の産科学、新生児学に加わってきた。[仁志田博司]
『仁志田博司編著、鈴森薫・森川功著『出生をめぐるバイオエシックス――周産期の臨床にみる「母と子のいのち」』(1999・メジカルビュー社) ▽仁志田博司著『産科スタッフのための新生児学――出生から退院までの医療とリスク管理』(2002・メディカ出版)』

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最新 心理学事典の解説

世界保健機関(WHO)による『国際疾病分類International Classification of Diseases』の第10版(ICD-10)では,周産期を妊娠週数post-menstrual age(最終月経開始日を0週0日と換算)の22週から出生後7日未満と定義している。日本でも,1995年以降,厚生省および厚生労働省の統計でICD-10の定義が採用されている。この時期は,妊娠,分娩時に母体,胎児,新生児ともに異常が起こりやすく,産科,小児科の連携のもと総合的に母子の健康を守るための周産期医療が行なわれている。

 日本では,周産期以前の妊娠22週未満で妊娠が止まることを流産とよび(1990年厚生事務次官通達),この時期までの人工妊娠中絶が母体保護法により認められている。この基準の根拠は,「胎児が,母体外において,生命を保続することのできない時期」とされるが,医療技術の進歩により,最近では22週未満で出生した児の生存例も報告されている。また,文化背景や宗教観,福祉政策や経済的背景はこの基準に大きく影響し,国ごとで基準は異なっている。

 周産期以前を含む,受精卵が子宮内膜に着床してから出生するまでのおよそ280日間は出生前期prenatal periodとよばれる。出生前期は,主に以下の三つに区分される。①卵体期(受精卵期)germinal period(受精後から2週間=妊娠3週):受精卵は倍々に細胞分裂しながら卵管から子宮へと向かう。受精後4~5日で桑の実のような形をした桑実胚となり,子宮内に到達する。子宮にたどり着くと大きな胞胚となり,受精後12日ほどで子宮内膜に着床する(妊娠の成立)。②胎芽期embryonic period(妊娠4~8週):重要な器官が集中的に作られる時期である。脳や脊髄の神経細胞の約80%はこの時期に作られ,脳脊髄の基となるチューブ状の神経管が6週ころ完成する。心臓もこの時期にできあがり,8週までには内臓の各器官もほぼ完成し,血液が体内を循環し始める。薬物などの外界刺激に対して非常に敏感な時期であり,胎児の奇形のほとんどは各種器官が形成されるこの時期に起こる。③胎児期fetal period(妊娠9~40週):心拍リズムを基盤としたうごめくような全身運動は胎芽期にすでに見られるが,9週になると頭部,軀幹の独立した動き,上下肢の屈曲・伸展へと発達が進む。10週ころには,目の開閉,呼吸様運動,上肢の微細運動や手指の開閉,口の開閉などが見られる。12週には,下肢の屈曲が交互に起こる歩行をイメージさせる運動が出現する。15週には,手指を口内に入れて吸う行動(指吸い)も見られる。この時期までには,胎児が見せる身体運動のほぼすべての種類が確認できる。胎児の身体運動には,出生後も続く運動(呼吸様運動や眼球運動)やすぐに消えてしまう運動(驚愕様運動),生後いったん停滞し,その後再び出現してくる運動(指吸いや歩行様運動)が含まれる。

 感覚器官の発達について見ると,触覚はかなり早期から機能し始める。触覚刺激に対して最初に反応(反射)が誘発される部位は,口唇とその周辺である。10週前後には,口唇部への刺激によって,頸部および軀幹の屈曲が誘発される。12週には刺激を受けると口を閉じる。上肢(掌)や下肢(足のかかと)の反応が触覚刺激によって誘発されるのは,10週ころである。掌を軽くこすると手指を軽く屈曲させ,足のかかとに触れると,足の指や軀幹を屈曲させる。視覚器官は,16週ころに形成される。視神経が大脳と結びつき,視覚情報を感じ取ることが可能となる。強い光を母親の腹部に当てると胎児は目で光を感じ,後ずさりをする(小林登,2000)。ただし,この時期を過ぎても,胎児は子宮内でまぶたを閉じていることがほとんどで,眼球運動の調整機能は十分発達していない。耳については,20~21週ころ,内耳と外耳という基本形態ができあがる。さらに,聴神経が大脳と結びつき,25週には音を感じ取る聴覚受容器官として機能し始める。実際,妊娠後期には,母親と他の女性の声を区別する反応を見せることがわかっている。味覚は28週ころに機能し始める。サッカリン(甘味)溶液を子宮内に注入すると,胎児は羊水を飲み込む頻度を高めるが,苦み溶液を注入すると,反対に飲み込む頻度を減らす(Verny,T.R.,1987)。

【出生】 妊娠36週を過ぎると,子宮外で生存可能な身体準備が整う。37週0日から41週6日までの出生を満期産full term birth(正期産)とよぶ。出生時体重birth weightは2500~4000g,身長は約50cmである。42週(42週0日)以降の出産は,過期産post-term birthとよばれる。過期産では胎盤機能低下,羊水過少,胎便混濁羊水,巨大児に伴う分娩時障害など出産時のリスクが高くなる。

 37週未満で生まれた児は早産児premature infantとよばれ,出生時の管理,治療が必要である。また,早産児に限らず出生時体重が2500g未満の児,低出生体重児low birth weight infantも出生時の管理が必要となる。低出生体重児のうち,とくに1500g未満の児を極低出生体重児very low birth weight infant,1000g未満の児を超低出生体重児extremely low birth weight infantとよぶ。先進国では,一般に女性の体格向上とともに児の出生時体重も漸増しつづけているが,日本では低出生体重児が特異的に増加している。その原因として,①医学的な理由による妊娠中の摂取エネルギーの制限や美容上の理由による栄養摂取の制限(ダイエット),②妊娠中の喫煙の増加,③多胎児の増加,④高年出産の増加などが考えられている。

 早産児,低出生体重児は,身体発育だけでなく,行動面,情動,認知面においても発達予後のリスクが高い可能性が指摘されている。低出生体重児では,神経学的障害を認めない場合でも,就学の時点で学習障害(LD)や行動障害など学習および行動上の問題を生じる頻度が相対的に高い。注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症も比較的頻度が高いという報告がある。

【出生後】 出生後28日間を新生児期neonatal periodとよぶ。新生児は1日の約65~70%(16~17時間)眠る。目覚めるのは哺乳や排泄を行なう短時間だけであり,出生直後は昼夜の区別はない。睡眠-覚醒パターンは24時間で均等に分布するが,日齢が進むにつれて,睡眠が夜間に集中してくる。夜間睡眠を基本とする24時間周期の睡眠-覚醒のサーカディアン・リズムcircadian rhythm(概日リズム)が確立するのは生後5~6週といわれるが,個人差は大きい。

 ヒトの新生児は他の動物に比べて,身体的に未熟な状態で生まれる。ポルトマンPortmann,A.は,「ヒトは,高等哺乳類の発達の原則でいえば,母親の胎内で過ごすべき時期を1年程度短縮して生まれてくる。ヒトの出生の状態は,他の動物でいえば未成熟,早産だ」と表現した(生理的早産説)。しかし,今では,ヒトの新生児はかなり精緻な知覚,応答能力をもって生まれてくることがわかっている。ヒトの新生児は同種個体に関連する外界刺激(顔のように見える図形や,他個体の視線方向,生物らしい運動パターンなど)を選択的に知覚する。また,視覚,聴覚,触覚など複数の感覚様相を協応させて外界刺激を知覚し,応答するといわれる。新生児が覚醒状態にあるときに,目の前でゆっくり舌を突き出したり,口を開閉したりする表情を見せると,新生児は自分の目では確認できないはずの表情を区別し,模倣する。1977年にメルツォフMeltzoff,A.N.らによって報告されたこの現象は,新生児模倣neonatal imitationとよばれ,ヒトは生まれながらに視覚(他者の運動)情報と自らの運動(自己受容感覚的)情報とを鏡のように対応づけると考えられている。しかし,新生児模倣をはじめとする新生児期の知覚情報処理の神経系基盤については,いまだ解明できていない部分が多い。 →乳児期 →発達段階
〔明和 政子〕

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世界大百科事典内の周産期の言及

【周産期医学】より

…周産期における母児の医学的・生物学的問題を研究する学問をいう。具体的には,正常あるいは異常な環境における胎児の生理や病態生理,分娩に伴う胎児の生理的変化,子宮内因子や出生後の外的因子に影響される新生児の医学が研究の対象となる。…

※「周産期」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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