改訂新版 世界大百科事典 「唐律疏議」の意味・わかりやすい解説
唐律疏議 (とうりつそぎ)
Táng lǜ shū yì
中国,唐代の刑法典たる律の官撰注釈書。30巻。唐の長孫無忌らの奉勅撰と伝えられる。《唐律》12編500条(実は502条)の各条にわたって字句の解釈をほどこすとともに,疑義の生じそうな条には適用に関する問答を付していて,唐代のみならず,中国刑法史の研究上もっとも重要な書である。本書は653年(永徽4)に長孫無忌らによって編集された《永徽律疏》とされてきたが,仁井田陞らは737年(開元25)に李林甫らによって編纂された《開元律疏》であると主張した。律の本文のみならず,疏議の部分も法的効力をもっていたので,後世《唐律》12巻の形で出版されることは珍しく,《唐律疏議》30巻の形式で伝えられ,日本でも江戸時代に刊行された〈官版〉のなかに含まれていた。日本の大宝律,養老律の伝存状況は,律全体の4分の1ほどを占めるにすぎないので,残りの律の復元に際しても,その母法たる唐初の疏議は貴重な文献である。
執筆者:礪波 護
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報