断獄
だんごく
律令(りつりょう)の刑事訴訟手続。断獄の普通裁判管轄は、断罪(判決を下すこと)と決行(刑罰の執行)との二つの標準によって定まったが、両者をともに有するのは天皇および太政官(だいじょうかん)だけで、それ以下の裁判所はすべての犯罪につき断罪権は有するが、決行権を有するのは特定の犯罪に限られた。断獄の初審裁判権は犯罪地を管轄する官司に属した。断獄の手続は原則として、弾正台(だんじょうだい)の糾弾、本司の挙劾または被害者もしくは公衆の告言によって開始された。断獄における審理は鞫獄(きくごく)といったが、鞫獄は告言の範囲にとどまるべきものとされた。断罪には原則として自白を要したので、犯罪の嫌疑が濃厚であって、しかも自白しない場合には、拷問を行うことが許された。なお判決文を断文と称し、断文にはかならず律令格式(きゃくしき)の正文を引用することになっていた。
[石井良助]
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だん‐ごく【断獄】
〘名〙 罪を裁くこと。断罪。また、罪を裁いて
斬罪に処すること。うちくび。
死罪。
※律(718)律目録「断獄第十二」
※泰西国法論(1868)〈津田真道訳〉一「断獄
此は刑律を犯せる人の罪科を裁断するを云ふ」 〔漢書‐文帝紀〕
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だん‐ごく【断獄】
1 罪を裁くこと。断罪。
2 罪を裁いて斬罪に処すること。打ち首。死罪。
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世界大百科事典内の断獄の言及
【裁判】より
…【平松 義郎】
[近代]
明治になった当初は行政権と司法権は混交状態にあったが,1871年(明治4)に司法省が設けられ,72年に江藤新平が司法卿となって以来,両者の分離が進められた。当時は民事裁判を聴訟,刑事裁判を断獄といった。刑事裁判に関しては,フランス法に範をとった治罪法が1870年に公布され(1872施行),90年にはこれを改正した(旧々)刑事訴訟法が公布された。…
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