喉輪(読み)のどわ

精選版 日本国語大辞典 「喉輪」の意味・読み・例文・類語

のど‐わ【喉輪】

〘名〙
① 防御用の武具。鎧(よろい)の付属具で、喉の所に懸けて胸板のはずれを覆うもの。月形の鉄と蝙蝠付(こうもりづけ)に威し付けた垂(たれ)二段からなる。よだれかけ。
蔭凉軒日録‐長享元年(1487)九月一二日「五鼓之後御出陳。被御髪御八、御喉輪、小手〈略〉御太刀、御馬河原毛、其御形躰神工亦不画出
② =のどわぜめ(喉輪攻)〔相撲講話(1919)〕

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デジタル大辞泉 「喉輪」の意味・読み・例文・類語

のど‐わ【喉輪】

よろい小具足の一。首にかけて、のどから胸板の上のすきまを覆うもの。月形の鉄に小札こざねの板二段のたれを革製の蝙蝠付こうもりづけで取り付ける。
喉輪攻のどわぜ」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「喉輪」の意味・わかりやすい解説

喉輪
のどわ

喉と胸の上部を防護する甲冑(かっちゅう)の小具足。涎懸(よだれかけ)ともいい、同様のものに曲輪(ぐるわ)がある。発生したのは南北朝時代ごろで、室町時代に流行しておもに胴丸(どうまる)、腹巻に添えられた。喉輪の構成は、月形(つきがた)という馬蹄(ばてい)形の鉄製漆塗りの金具に、扇面形の小札板(こざねいた)二段の下(さ)げを、革製の蝙蝠付(こうもりづけ)という装置で取り付ける。月形の両端に設けた緒を首の後ろに回して結び着装する。このようすは愛知県地蔵(じぞう)院所蔵『出陣影(しゅつじんえい)』、東京永青(えいせい)文庫所蔵「細川澄元画像」などに描写され、遺物は島根県日御碕(ひのみさき)神社に初期の喉輪が伝来するほか、室町時代以降のものが各地の社寺や個人の所蔵品中に多数ある。

 曲輪は室町末期ごろに現れ、おもに腹巻に添えられた。月形のかわりに蝶番(ちょうつがい)で連接した横長の鉄板を、立襟(たてえり)のように頸部(けいぶ)を取り巻く形として、首回りの防護力を強化した点が喉輪と異なる。下げは板物(いたもの)製が多く製作も劣るが、機能的には喉輪同様である。近世に入り、頬当(ほおあて)の流行に伴い喉輪、曲輪ともに衰退したが、江戸中期以降、復古調の甲冑の付属具としてふたたびつくられた。

[山岸素夫]

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世界大百科事典(旧版)内の喉輪の言及

【鎧】より

…また綿嚙,蝙蝠付,弦走,兜の吹返しなど,小札地を染韋で張り,または革を心に染韋で包んだ部分を革所と総称している。また大鎧には兜,大袖を具足するほかに喉輪(のどわ),籠手(こて),臑当(すねあて)(鎌倉末期以後は大立挙臑当を使用した)などの小具足を付属し,《伴大納言絵詞》《平治物語絵巻》《蒙古襲来絵詞》などに描かれている。籠手は片籠手と称し,弓手(ゆんで)のみを普通とする。…

※「喉輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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