小具足(読み)コグソク

デジタル大辞泉 「小具足」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぐそく【小具足】

よろいの付属具の称。籠手こて臑当すねあ脇楯わいだてなど。
鎧下装束1だけを着用して、鎧をつけない姿。小具足出装こぐそくいでたち

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精選版 日本国語大辞典 「小具足」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぐそく【小具足】

〘名〙
甲冑の付属具。籠手(こて)臑当(すねあて)佩盾(はいたて)面具(めんぐ)の類の総称
吾妻鏡‐治承四年(1180)九月一七日「著紺村濃鎧直垂。加小具足。跪常胤之傍
② 鎧下(よろいした)の装束に鎧は着けないで籠手、臑当、佩盾、また烏帽子などを着用した姿。①だけをつけた出立(いでたち)の姿。
小島のくちずさみ(1353)「義詮朝臣小具足にて先陣仕うまつる」
柔術取手、すなわち捕縛術。こしまわり。

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改訂新版 世界大百科事典 「小具足」の意味・わかりやすい解説

小具足 (こぐそく)

身体をまもるための防御兵器のうち,主要な具足である甲冑(かつちゆう)に対して,それに付属する部分品の各種をふくめて小具足という。正式な武装は甲冑と小具足によって構成されるので,《源平盛衰記》にも源義経が鷲尾経春に〈赤革威(あかがわおどし)の甲冑,小具足付けて給ひたり〉とみえている。小具足の内容は時代によって相違するが,《随兵次第》に〈小具足は黒く有るべし,殊に籠手(こて),すねあて,ほう当,黒く有るべし〉とあるように,もっぱら籠手と脛当(すねあて)を中心として,12世紀ころには面具の半頭(はつぶり),14世紀以後には頰当(ほおあて)や喉輪(のどわ),さらに脛当と草摺くさずり)のすきまをふさぐ佩盾(はいだて)の類を総称した。小具足姿は,烏帽子,小袖,大口(おおぐち),鎧直垂(よろいひたたれ)などの鎧下の装束に小具足をつけ,貫(つらぬき)の沓(くつ)をはいたいでたちをいい,《太平記》にも脇屋義助が〈紺地ノ錦ノ直垂ニ小具足計リニテ左ノ一ノ座ニ著キ給フ〉とあるように,陣中などで,ただちに甲冑をつけることのできる体制をととのえたままくつろぐときの姿とした。なお大鎧のときは脇盾(わいだて)を加えて小具足姿とした。たとえば《参考保元物語》に源義朝が〈あかぢのにしきのひたたれに,わいだてこぐそくばかりにて,たちをはき,ゑぼし引たて〉とみえる。そのありさまは絵巻物中にしばしば表現され,ことに《蒙古襲来絵詞》中の河野通有や通忠の姿に明らかである。なお15世紀の末から鎧下の装束が簡易化されたので,《諸書当用抄》には〈小具足出立(いでたち)とは,白かたびらを著,上にかたぎぬ,けしやうばかまに,小手をさし,のど輪をして,太刀をはき,はちまきをいたし候〉とある。このような小具足姿で,将軍供奉の武士たちは路次の警固にあたり,兇徒に対する組打ち手どりの早わざを習練して,これを小具足術といい,略して小具足ともいった。
当世具足
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小具足」の意味・わかりやすい解説

小具足
こぐそく

甲冑(かっちゅう)の付属具の総称。実遺例はすでに古墳出土の甲冑に認められるが、この名称は鎌倉時代以来、『吾妻鏡(あづまかがみ)』をはじめ、記録や軍記物語の記述にみえる。兜(かぶと)・胴(どう)・袖(そで)を三つ物(みつもの)といい、この3部分で一領を構成する甲冑を鎧(よろい)ととなえ、物の具(そな)わる意味をもって具足とよんだのに対し、小具足は半首(はつむり)・喉輪(のどわ)・籠手(こて)・膝鎧(ひざよろい)(佩楯(はいだて))・臑当(すねあて)などの付属具をさし、のちに頬当(ほおあて)・脇当(わきあて)などが加わった。『承久記(じょうきゅうき)』に「盛綱(もりつな)鎧ハ脱(ぬぎ)テ小具足ニ太刀計(たちばかり)帯テ」とあり、また、熱田(あつた)地蔵院所蔵『出陣影』に描かれているごとく、鎧を着ず鎧直垂(ひたたれ)に脇楯(わいだて)および小具足の武装を小具足の出立(いでたち)ととなえた。

[山岸素夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小具足」の意味・わかりやすい解説

小具足
こぐそく

甲冑に付属する防具のこと。時代によりさまざまな変遷がある。小具足が最も完備したのは室町時代で,面具,喉輪,肩当て,襟回り,脇当て,籠手 (こて) ,佩楯 (はいだて) ,膝当てなどがある。なお鎧武者が甲冑を脱いだ,喉輪,籠手,臑当て,毛靴の姿でいるのを「小具足の出装 (いでたち) 」という。

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