日本大百科全書(ニッポニカ) 「キャビテーション」の意味・わかりやすい解説
キャビテーション
きゃびてーしょん
cavitation
空洞現象ともいう。非圧縮性流体では、流線に沿って
p+ρv2/2=一定 (ベルヌーイの定理)
が成り立つ。ここに、pは圧力、ρは流体の密度、vは流速である。断面積σが変化している管を考えると、
σv=一定
であるから、管を絞る、つまりσを小さくすると流速は大きくなり、ベルヌーイの定理により圧力pは小さくなる。圧力が下がって流体の蒸気圧以下になると、流体は蒸発し気泡が発生する。このように流体の管中に気泡が発生する現象をキャビテーションとよぶ。気泡の発生する管の細い部分から下流側では、無数の気泡が発生し流されていく。管が太くなっていくにつれ、圧力は上昇して気泡がつぶれるが、そのとき爆発的な圧力が生じて、管を振動させ騒音がおこり、ときには管を損傷させる。ボイラーから高温の水を引き出す管の中にキャビテーションがおこって事故になることが多い。管の中の流れとは逆に、流体中を物体が動くときにもキャビテーションはおこる。ポンプやプロペラ、飛行機の翼などでは、物体に沿って流れる流体の流速が速くなる部分で圧力降下がおこり、気泡が発生する。水中翼船の翼におこるキャビテーションでは、翼を変形させたり折ったりするくらいの爆発的な力が発生する。これを避けるために、空洞の発生が翼の後端になるような設計がくふうされている。
[池内 了]