四民月令(読み)しみんげつれい(その他表記)Sì mín yuè lìng

改訂新版 世界大百科事典 「四民月令」の意味・わかりやすい解説

四民月令 (しみんげつれい)
Sì mín yuè lìng

中国,後漢後期の崔寔(さいしよく)の著。四民とは士農工商,すなわちすべての人のこと。月令とは12ヵ月に割り当てられた年中行事の意。崔寔は五原太守,遼東太守などを歴任,とくに五原では住民に紡織を教えて善政を施した。本書は各月に分けて荘園を経営していくための仕事を,礼儀教育,農事作業,家事手工芸,武器の整備調薬,農産物取引等々にわたって述べており,当時の一般生活,とくに豪族の荘園経営の姿をうかがううえの貴重な史料である。本書の原本は早く散逸し,現存本は《斉民要術》《太平御覧》等から逸文を集めたもの。本書の通読には《玉燭宝典》そのほかの諸書を参照し,解説も付せられた,石声漢校注《四民月令校注》(1965)がよい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四民月令」の意味・わかりやすい解説

四民月令
しみんげつれい
Si-min yue-ling; Ssū-min yüeh-ling

中国,後漢時代の年中行事記。博陵安平 (河北省深県) の人崔寔 (さいしょく) の著。完本は伝わらず,逸文を集めたものが『漢魏遺書抄』『全上古三代秦漢三国六朝文』などに収められている。内容は祭祀宗族,農事,家計,教育,盗賊防御,治病などに及ぶが,これは崔寔の故郷における豪族の生活状態を反映していると思われる。特に各月の穀物の売出し買入れや,農民暴動対策,一族の祭祀や賑給 (しんごう) などを述べている点は興味深い

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世界大百科事典(旧版)内の四民月令の言及

【崔寔】より

…以後,五原太守,遼東太守などを歴任。碑文,銘文,詩など著作は15編にのぼり,なかでも後漢期の豪族の年中行事記《四民月令》は有名である。【冨谷 至】。…

【農事暦】より

…先秦の月令や《夏小正》《礼記(らいき)》月令などには12ヵ月に関連する天象,物候,農耕,狩猟のことが書かれているが,天の運行に従う四時の政治の基準を示す立場のものである。月令が年間の農作業を主とするようになって農事暦的性格を強めたのは,後漢の豪族で荘園主でもあった崔寔(さいしよく)が,荘園経営の立場から荘園内の人々のなすべき仕事を各月ごとにまとめた《四民月令(しみんげつれい)》からということができよう。以後,各時代の農事暦をあげれば,《玉燭宝典》(隋,杜台卿),《四時纂要》(唐末五代,韓顎),《農桑衣食撮要》(元,魯明善),《養余月令》(明,戴羲),《農圃便覧》(清,丁宜曾)などがある。…

※「四民月令」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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