国・邦(読み)くに

精選版 日本国語大辞典 「国・邦」の意味・読み・例文・類語

くに【国・邦】

〘名〙
① (天や海に対して) 大地。土地。陸地
書紀(720)景行二七年二月(北野本南北朝期訓)「亦土地(クニつち)沃壌(こ)えて曠(ひろ)し」
※延喜式(927)祝詞「天の壁(かき)立つ極み、国(くに)の退(そ)き立つ限り」
② 一つのまとまりをなした世界の称。想像上の世界などにもいう。「夢の国」、「お伽の国」など。
万葉(8C後)五・八六五「君をまつ松浦の浦の少女らは常世(とこよ)の久爾(クニ)海人(あま)少女かも」
③ 国家。国土。地球上の各政府の統治権下にある土地。また、特に日本国をいう。
※書紀(720)仁徳五〇年三月五日・歌謡「汝(な)こそは 世の遠(とほ)人 汝こそは 区珥(クニ)の長(なか)人」
※保元(1220頃か)上「国も富み民も安かりき
④ 帝位。天皇の位。また、天皇の政務。→国を譲る
随筆・胆大小心録(1808)九九「清の二世康凞帝はさりとはさりとは英主也。国とりて後、中土の聖人の道をよく教示して」
⑤ 日本の行政上の一区画をなした土地の称。
古事記(712)上・歌謡「八島久爾(やしまクニ) 妻枕(ま)きかねて 遠遠し 高志(こし)の久邇(クニ)に」
平家(13C前)一「日本秋津嶋は纔(わづか)に六十六箇国、平家知行の国卅余箇国」
国府。また、国司による政治。
※続日本紀‐宝亀七年(776)五月戊子「出羽国志波村賊、叛逆、与国相戦、官軍不利」
※宇治拾遺(1221頃)三「尾張守になし給てけり。それに、尾張に下て国行ひけるに」
⑦ 任国。領国。知行所
※土左(935頃)承平四年一二月二七日「京にてうまれたりし女児、くににてにはかに失せにしかば」
守護。守護所。
※三箇院家抄(1469頃)「鶴丸名御年貢六十三貫文事、国儀被計略取納
⑨ 生国。郷里。故郷。
※古事記(712)下・歌謡「沖へには 小舟連らく くろざやの まさづ子吾妹(わぎも) 玖邇(クニ)へ下らす」
魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「また郷里(クニ)へ帰れなどと云ひはしまいか」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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