国連人権理事会(読み)コクレンジンケンリジカイ(その他表記)United Nations Human Rights Council

デジタル大辞泉 「国連人権理事会」の意味・読み・例文・類語

こくれん‐じんけんりじかい〔‐ジンケンリジクワイ〕【国連人権理事会】

ユー‐エヌ‐エッチ‐アール‐シー(UNHRC)

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共同通信ニュース用語解説 「国連人権理事会」の解説

国連人権理事会

国連人権委員会を格上げし、2006年に発足した国連総会の下部機関。国連加盟国の人権状況を監視し、改善を促すため、年に少なくとも3回の会期がある。スイス西部ジュネーブの国連欧州本部で開かれる。任期3年の理事国は地域別に選出され、計47カ国。現在は米英独やウクライナのほか、自国での人権状況が問題視されている中国も名を連ねており、人権団体からは批判が出ている。(共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国連人権理事会」の意味・わかりやすい解説

国連人権理事会
こくれんじんけんりじかい
United Nations Human Rights Council

国連が人権問題への対応を強化するために、人権委員会(1946年設置)を改組して2006年に設置した組織。所在地はジュネーブ。47の理事国で構成され、人権理事会の事務局は国連人権高等弁務官事務所が担当する。国連では経済社会理事会のもとに1946年に人権委員会が設置され、世界人権宣言国際人権規約などを作成・採択し、世界中の人権問題を取り上げてきた。しかし、人権侵害で世界から非難を浴びている国が委員国として選出されたこともあり、人権委員会委員国の選出方法改善が求められるようになった。また、人権委員会でどの国の人権侵害状況を審議するかについても恣意(しい)的であるとの批判も行われた。

 そこで、この人権委員会を発展的に解消するものとして、2006年に国連人権理事会が総会のもとに設置された。「衡平な地理的配分」の原則に基づき、人権理事会の理事国数は、アフリカグループ13か国、アジアグループ13か国、東ヨーロッパ6か国、ラテンアメリカおよびカリブ諸国8か国、そして西欧およびその他グループ7か国となっている。理事国は、3年を任期とし連続2期の後、引き続いて再選されることはない。

 かつての人権委員会では、経済社会理事会のメンバー国(54か国)が人権委員会の委員国を選出していたが、人権理事会では、総会のすべての加盟国が理事選挙に参加できることになった。アメリカやEU諸国は、安全保障理事会において人権侵害やテロ支援を理由として制裁が科された国は理事国になる資格を剥奪(はくだつ)すべきであると主張し、最終的には、もし理事国が任期中に、たとえばジェノサイドのような重大かつ組織的・継続的な人権侵害を行った場合、国連総会がその理事国の権利と特権を停止できることが定められた。

 人権理事会の役割は、人権意識の普及に努め、人権に関する国際法の発展のために努力することなどである。このなかで注目すべき活動は、国連加盟国すべての国の人権保護状況を定期的に審査する普遍的・定期的レビューUniversal Periodic Reviewである。国連加盟国のすべてが審査の対象とされるのであり、とくに人権理事会理事国に対しては率先して審査が行われる。

 審査の手順は以下のとおりである。まず、審査を受ける国が報告書を作成し、人権高等弁務官事務所に提出する。人権理事会の作業部会での審議を経て、人権理事会本会合において、審査の結果文書が採択される。ただし、採択の決定の前に、審査対象国はもとより、理事国や他の国連加盟国は自国の見解を表明することができる。

 人権理事会の事務局を担当する国連人権高等弁務官事務所は、1993年に設立された。冷戦が終わり、国際社会の普遍的な価値である人権を保護する体制を強化すべきであるとの先進諸国、とくにアメリカの主張に基づくものであった。

 人権理事会においては、人権委員会の時代から、NGOからの通報が重要な情報源としての役割を果たしている。

[大芝 亮]

 2022年4月、ウクライナでの重大かつ組織的な人権侵害を理由にロシアは理事国の資格を停止させられたため、直後に脱退を表明した。

[編集部]

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知恵蔵 「国連人権理事会」の解説

国連人権理事会

世界の人権保障、人権侵害の改善、人権意識の促進などを目的に設置されている国連の機関。国連人権委員会(1946年設立)の強化を図るため、2006年に改組・設立された。本部はジュネーブ(スイス)で、事務局は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が担う。47の理事国は総会で選出されるが、地理的な公平性に鑑み、アジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、西欧ほか7、東欧6と配分されている。任期は3年、連続2期後の再選は不可。
安全保障理事会と異なり、国連人権理事会の決議には法的拘束力はない。ただ、前身の国連人権委員会が経済社会理事会の補助機関だったのに対し、国連人権理事会は総会の下部機関になったため、その決議は国際社会の総意という重い尊厳を持つ。加えて、全加盟国に対する普遍性と平等を確保するため、加盟国の人権状況を監視・審査する制度「普遍的・定期的レビュー(UPR)」が新設されている。国連憲章や世界人権宣言、人権に関する国際条約などを基準に、加盟国の人権状況を審査する制度で、具体的にはUPRの作業部会が被審査国の政府報告書、国連文書、NGO情報などを審査し、その報告を受けた国連人権理事会が「結果文章」として発表する。「結果文章」は、勧告(結論)と被審査国の自発的誓約から成る。人権侵害が確認された場合、国連人権理事会は国内外の人権機関やNGO等と協力しながら、対象国が人権侵害の防止や是正などの義務を果たせるよう支援する。
以上のように、国連人権理事会は多国間の人権問題を議論・解決する最大の国際組織だが、こうした人権問題交渉への影響力が極めて強い米国のトランプ大統領が2018年6月に離脱を表明。これまで「人権大国」をうたってきた米国の突然の離脱表明は、国際社会を大いに失望させた。トランプ政権は、ベネズエラ、中国、キューバなどの人権侵害国が理事会に含まれていること、同盟国であるイスラエルへ恒常的な偏見があることなどを理由に挙げている。イスラエルのネタニヤフ首相は英断として全面支持したが、グレーテス国連事務総長やザイド国連人権高等弁務官は遺憾の意を表明。欧州連合(EU)やイギリス、ドイツ、フランスなども即座に批判と懸念を示した。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

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